「正しいはずなのに噛み合わない──在宅鍼灸・訪問ケアで判断がズレる瞬間」

在宅や訪問の現場では、
まず本人の訴えを聞き、
困っていることや改善すべき点を施術者なりに整理します。

正しいはずなのに、なぜ噛み合わなくなるのか

そこから、
「今はここに手を入れた方がいい」
「この動きが必要そうだ」
と考えて、施術や運動、トレーニングを組み立てる。

流れとしては、ごく自然です。

ただ、その“自然な流れ”が、
そのまま噛み合うとは限りません。

本人は、そこを望んでいない。
昔からの思い込みがあり、触れてほしくない場所がある。
それは物理的な話だけでなく、心理的な部分も含みます。
今は別のことをしてほしい、という思いがある場合もあります。

施術者としては理由があって選んだ内容でも、
相手の中では、まったく別の前提が動いている。

この時点で、
小さなズレはすでに始まっています。


施術者の「正解」と、患者の「正解」がズレる瞬間

よくあるのは、過去の経験が基準になるケースです。

「前の施術所では、こうだった」
「近所のあの人は、これで良くなった」

いわゆる、生存者バイアスのような話も多い。

感情に寄り添わない正論は、距離を生む

また、運動やトレーニングを提案すると、
こんな反応が返ってくることもあります。

「そんなに動かしたら、余計に痛くなる」
「前にやって、悪くなったことがある」

実際、
トレーニング後に痛みが出ることはあります。

そのとき、
施術者側の説明が足りていなかった可能性もある。

ただ、
「やり方が間違っていた」と切り捨てるだけでは、
このズレは解消しません。

相手の中では、
すでに“納得できなかった経験”として残っているからです。


説明したうえで、押し通す判断が必要な場面もある

正しいことをしていても、
感情に寄り添えていないと、距離が生まれます。

その場では、
「分かりました」
「ありがとうございます」
と言われる。

でも、それが本心かどうかは分かりません。

表情や声のトーンに、
違和感がにじむこともあります。

一方で、
いつも感情に合わせればいいわけでもありません。

状況によっては、
きちんと説明し、
理解を求めて押し通した方が、
結果的に信頼につながることもある。

この判断は、
教科書には載っていません。


噛み合わなさは、関係を見直すサインかもしれない

こうした場面を振り返ると、
噛み合わなさの原因は、
技術の正誤だけでは説明できません。

人格の問題とも言い切れない。

立場や期待、
「何をしてもらえると思っているか」
その前提がズレると、
正しいことでも、関係が揺れます。

このズレを扱うには、
技術とは別の力が必要になる場面もあります。


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噛み合わなさを感じたとき、
どこで線を引くか・どう判断するかは状況によって変わります。

判断の整理や、具体的な線引きについては、
以下の記事でまとめています。

・延長や頻度の相談で迷ったとき
「訪問鍼灸の判断基準|延長や頻度の相談で迷わない手順」

・突然のキャンセルや変更が続くとき
「【訪問鍼灸】突然のキャンセルはどう判断する?」

・施術者自身がしんどくなってきたとき
「訪問鍼灸を続けるための身体管理|疲労で判断を誤らないために」

・在宅ケア全体の判断軸を整理したいとき
→「在宅ケアが続く働き方の基礎(まとめ記事)」後日公開予定