訪問鍼灸でズレが生まれる理由――「期待・前提・役割」が食い違う瞬間
訪問鍼灸の現場で起きるトラブルや違和感は、
技術や制度以前に、
「何を期待しているか」「どこまでを役割だと思っているか」
のズレから始まることがほとんどです。
このズレは、
誰かが悪いわけでも、
判断が間違っているわけでもありません。
ただ、
最初にすり合わせられていないまま
関係が進んでしまうと、
あとから修正するのがとても難しくなります。
具体的に起きやすいズレのエピソード
「お願いされた側」と「頼んだつもりのない側」
訪問鍼灸では、
本人ではなく 家族・ケアマネ・施設 から
依頼が来るケースがあります。
その場合、
- 依頼者側
→「受けてくれる前提」「本人も困っているはず」 - 本人側
→「別に頼んでいない」「よく分からないまま始まった」
という状態が、
最初から生まれていることがあります。
この時点で、
ゴール設定が存在していない ため、
- 何を目的に来ているのか
- 何を期待されているのか
- どこまで関わるつもりなのか
が、誰の中にもはっきりしていません。
「施術者は全部わかっているはず」という前提
もう一つ多いのが、
- 症状の改善
- 生活の困りごと
- ついでのお願い(家のこと・雑用)
これらが、
説明なしで当然のように含まれている ケースです。
本人の中では、
施術者なら察してくれる
これくらいはやってくれる
という前提ができていても、
施術者側はそれを共有されていません。
このズレは、
後になればなるほど修正が難しくなります。
※こうしたズレが起きたとき、私は感情ではなく「判断フロー」に一度戻すようにしています。
→ 判断フローは合っているのに、なぜ現場で苦しくなるのか
ズレが大きくなると何が起きるか
ズレが放置されると、
次のような状態が起きやすくなります。
- 判断を伝えるたびに空気が重くなる
- 「それはできません」と言うたびに関係が削れる
- 正しい判断をしているのに罪悪感が残る
- 施術内容より、人間関係に神経を使う
ここで重要なのは、
判断が正しいかどうかではなく、前提が共有されていない
という点です。
・判断は合っているのに、なぜ罪悪感や引っかかりが残るのか
→「なぜ正しい判断をしているのに、罪悪感が残るのか」
「正しさ」ではズレは埋まらない
ズレが起きたとき、
多くの施術者はこう考えます。
- 説明すれば分かってもらえるはず
- 理由を伝えれば納得してくれるはず
- 自分の困りごとを理解してもらえば改善するはず
しかし、
関係性の前提がズレている場合、説明は逆効果 になることがあります。
相手の中にあるのは、
- こちらは客だ
- それが仕事だ
- 前はやってくれた
といった「役割認識」です。
この状態で施術者側の感情や事情を伝えても、
それはそちらの都合ですよね
という反応になりやすく、
関係はむしろ壊れていきます。
期待や前提がズレた状態では、
どれだけ丁寧に説明しても判断は伝わりません。
その背景にある「伝わらない構造」については、こちらで整理しています。
→ 訪問鍼灸で判断が伝わらない理由
(説明しても分かってもらえない構造)
ズレを防ぐために一番大事なこと
ズレを防ぐために必要なのは、
正しさを伝えることではなく、目的地を合わせること です。
- 何を目的に来ているのか
- どこまで関わるつもりなのか
- できること・できないことは何か
これを最初に共有できない場合、
あとから修正するのは非常に難しくなります。
目的地が違うまま進む関係は、
どこかで必ず苦しくなります。
※期待や役割がズレていると感じたときは、「どう判断するか」だけでなく
「どう伝えるか」も同じくらい重要になります。
→ 訪問鍼灸で「判断」をどう伝えるか|関係を壊さないための考え方
ズレが修復できないときもある
すでに、
- 役割を押し付けられている
- 前提を変える余地がない
- 話し合いが成立しない
こうした状態であれば、
無理に関係を続けることが
正解とは限りません。
ズレを認識し、
距離を取る判断 も
現場では必要な選択です。
期待や前提がズレたまま判断をすると、
あとから強い違和感や苦しさが残ることがあります。
その感覚をどう扱うかについては、こちらで整理しています。
→ 判断したあとに苦しくなる理由/「これで良かったのか?」が消えないとき
まとめ
訪問鍼灸で起きる多くの摩擦は、
「判断の間違い」ではなく、
期待・前提・役割のズレ から生まれます。
このズレをどう扱うか、
判断をどう伝えるかによって、
関係の行方は大きく変わります。
※ これは伝え方の問題というより、
判断の立ち位置そのものがズレている可能性があります。
→ 在宅鍼灸で悩みが消えない理由|あなたが詰まっているのはどこ?
関連記事(ズレを感じたときはこちら)
・判断基準は合っているのに、現場で苦しくなるとき
→ 判断フローは合っているのに、なぜ現場で苦しくなるのか
・判断をどう伝えるかで悩んだとき
→ 訪問鍼灸で「判断」をどう伝えるか|関係を壊さないための考え方
・関係性そのものに違和感を感じたとき
→ 敬意が成立しない関係から離れるという判断
