【訪問鍼灸の制度はこれだけ知れば迷わない|現場判断の7つの軸】

訪問鍼灸を始めようと思ったとき、
正直いちばん大変だったのは制度の理解そのものではなく、

「なんとなく不安」
「間違えたら請求できないかも…」
「あとで医師や保険者に怒られたらどうしよう」

こうした“見えない怖さ”でした。

制度は表向きに明文化されていても、
実務ではグレーな判断や、保険者ごとに違う解釈があり、
複雑さを言い訳にして前に進みにくくなります。

ただ、ここを越えないと一歩が出ない。

だからこの記事では、制度の細かい条文ではなく、

現場で迷わない7つの判断軸だけに絞ります。

判断軸①:同意書は歯科以外の医師なら依頼できる

訪問鍼灸の制度では、
同意書を書ける医師は「歯科以外の医師」であれば問題ありません。

👉「同意書で揉めやすいポイントと、実際の断り方」現在準備中

内科でもOK。整形外科に限定されません。

現場では「整形じゃないとダメ」と誤解されがちですが、
制度上その縛りはありません。

ただし注意点が2つあります👇

  • 医療者側が制度を誤解していることがある
  • 実際は書いてくれないこともある

この時に悩む必要はありません。

同意書は法律上、医師側に責任は発生しません。
「患者の施術に同意する」というだけで、
治療効果や安全性の責任ではありません。

だから本来、書き渋る理由はないのですが、
制度を知らない医療者もまだ多いのが現実。

※マッサージは医師判断が必要な項目があります
(あん摩マッサージ指圧師の制度だから)
鍼灸とは判断軸が少し違います。


👇明日すぐ動ける一歩

  • かかりつけ医を確認
  • 次回通院日を把握
  • 「同意書をお願いする想定」で準備

判断軸②:距離は「制度」ではなく「現実」で決める

結論
制度上は4km区切りでも、現場では 2km以内が安全ライン

👉「訪問鍼灸|距離は制度ではなく“現場採算”で決める話」現在準備中

理由
訪問は時間と体力の消耗が大きく、遠いと利益が出にくいから。


制度上の距離と報酬はどう違う?

制度では往診料が改定されました👇

  • 改定後(令和6年10月〜)
    距離に関係なく1回 2,300円(自己負担1〜3割)

以前は👇

  • 4kmまで:2,300円
  • 4km超:2,550円

つまり、距離が報酬に影響する制度はなくなる方向。


でも現場で採算が合う距離とは別

訪問は、施術料より
移動時間と体力が利益を圧迫します

現場の実感として👇

距離収益性リスク
〜2km◎利益が出る移動ストレス少
2〜4km△利益薄い渋滞・遅延
4km〜×ほぼ赤字キャンセルで即赤字

特に都市部は信号・駐車問題で時間予測が困難。

制度理解だけで距離設定するとほぼ破綻します。


明日からできる実務判断

  • 基本は「2km以内のみ受付」
  • 既存利用者は例外あり
  • 測定アプリで所要時間を計測
  • キャンセル頻度も記録

利益は施術料ではなく、移動の短縮で生まれることを忘れない。


判断軸③:回数と時間は「決めてから動く」

結論
1回の施術時間・1ヶ月の施術回数は「患者に合わせる」よりも「最初に上限を決めておく」。

👉「訪問鍼灸は「長くするより回数」/延長より頻度を優先するべき理由」

理由
訪問の現場では延長要求・頻度希望がエスカレートしやすく、施術者の負担が気づかないうちに積み上がるから。


制度が定める境界線

療養費の査定ポイント👇

  • 月16回を超える場合は「理由」が必要になるケースあり
  • 近年は管理意識が強くなっている
  • 同意期間は原則6ヶ月

※数字には地域差もあり、最終判断は保険者。


現場基準(制度だけでは破綻する)

制度上は回数制限が緩くても
現場では労働負荷が直撃する。

例👇

  • 「今日だけ延長してほしい」
  • 「もう1回来てほしい」
  • 「来週は多くして」

好意で応じ続けると
→施術時間が伸びる
→移動がずれる
→スケジュール破綻

そもそも好意で回数を判断するものではなく、施術必要性で判断するもの

「制度上は可能」では何も守られない。


明日から使える線引き

  • 施術時間は最初に固定
     例:30分以内
  • 延長は原則しない
  • 回数は週1→週2の増加に慎重に
  • 増加する時は理由を共有
  • 回数・時間変更の基準を説明済みにする

働き方のメリット

  • 患者依存の予防
  • 心身の消耗を防ぐ
  • キャンセル時のリスクを減らす
  • 予約管理のストレス減

※制度理解が仕事を守る。


判断軸④:支払い方法は「原則と例外」を最初に決めておく

結論

訪問鍼灸では「支払い」がトラブルになりやすい。
だから最初の段階で支払いルールを明確にしておく。

理由

高齢者・家族間調整・認知機能の低下が絡むと、支払いの責任の所在が曖昧になりやすく、施術者が巻き込まれやすいから。

制度の建前はとてもシンプルで、

支払いは都度払い(その場で支払う)が原則

これが基本です。

「訪問鍼灸の支払いトラブル|月まとめ・預かり金の判断基準」現在準備中

ただ実際の現場では👇

  • 認知機能の低下
  • 1人暮らしで家族不在
  • 財布の管理が難しい
  • 小銭の用意が負担

制度どおりに毎回支払うことが、
本人にとって負担になる場合があります。

だから訪問では、あくまで例外として、次のように選択肢を提示しておくとトラブルを防げます👇

  • 都度払い(原則)
  • 月初まとめ払い(※本人または家族希望のみ)
  • 預り金→月末精算(※家族と事前共有できる場合のみ)

大切なのは、

「制度上の原則=都度払い」を尊重したうえで
「生活事情に応じた例外」を本人と共有しておく

という姿勢です。

さらに安全にするために、支払い方法を決めた際は必ず👇

  • 家族にも共有
  • メモを残す
  • 言った/言わないを防ぐ工夫

こうしておくだけで、
人間関係の摩耗を大きく減らせます。

※支払い方法は制度改定や保険者の判断で変わる場合があります。
※不明点は必ず所属組合や保険者へ確認してください。

判断軸⑤:他サービスとの境界線は「最初に説明」して曖昧さを残さない

結論
訪問鍼灸は現場が生活空間。
だから「できること」「できないこと」の線引きを最初に言語化しておくと、依頼が雪だるま的に膨らむのを防げる。

理由
制度上、鍼灸で請求できるのは「施術」に限られるが、生活空間は要求が広がりやすく、境界を曖昧にすると次のような負の連鎖になる👇

  • 施術以外の作業を頼まれる
  • 「ついで」の心理が積み上がる
  • 境界が崩れ、関係が揺らぐ
  • 話だけ聞いて帰れなくなる
  • 生活支援へとズレ込む

これらは制度違反というより、
施術者のメンタル・時間を削る最大の要因。


「制度上正しい」だけでは限界がある

現場では制度通りに運用しようとすると、むしろ破綻するケースが多い。

例👇

  • 施術記録は必要
  • 施術前後の確認は必要
    でも
    ・家事
    ・送迎
    ・見守り
    などは制度対象外。

ただ現場では、

電気代の請求書見てほしい
電球替えてほしい
冷蔵庫の奥に手が届かない
薬を探して

こうした依頼は珍しくない。

👉「訪問鍼灸で“やってはいけない頼まれごと”一覧」現在準備中


境界線は「対応の量」ではなく「目的」で判断する

線引きの基準👇

❌ できる/できない で判断
⭕ 施術に必要かどうかで判断


■対応して良い例

  • 施術位置確保のための片付け
  • 移動時の転倒回避
  • 体位調整

■対応NGにすべき例

  • 家事
  • 付き添い
  • 買い物
  • 送迎

■グレーゾーン例

  • 電球交換
  • 荷物移動
  • 探し物

→目的が生活支援のみならNG
→施術・安全のためなら限定的にOK


実務アドバイス(明日からでも使える)

訪問初回時に👇

「施術に必要な範囲は対応できますが、
生活支援は制度上できません。」

と必ず伝える。

曖昧なまま始めると、後から修正が非常に難しい。


判断軸⑥:施術者自身の身体管理は「制度より優先すべき前提条件」

結論
制度や請求の正確さよりも先に、施術者自身の身体が持続するかどうかを確認する必要がある。

理由
訪問は「施術×移動×コミュニケーション」で体力と精神が削られ、制度理解だけでは継続できないため。


制度の理解より「身体の限界」が先に来る

訪問を始めた頃は、売上や制度に意識が向きがちだが、
実際に崩れる順番は👇

1)移動の疲労
2)施術者自身の姿勢負担
3)精神的消耗
4)翌日の回復ができない

最終的に制度理解とは別のところで続けられなくなる。

👉「訪問鍼灸を続けるための身体管理|疲労で判断を誤らないために」


現場の実感

  • 15〜18人/日では翌日に疲労が抜けない
  • 施術時間より移動時間が消耗する
  • 電動自転車の導入が負担軽減になった
  • 長時間の強い手技は首・前腕に蓄積
  • 休憩は意図的に確保しないと取れない

制度理解と違い、
身体の限界は急にやってこない。
少しずつ線引きが曖昧になる。


「身体管理のルール」は数字で決める

抽象では守れないため👇

  • 1日の上限:8〜10件まで
  • 1コマ30分×移動10〜20分
  • 延長は原則不可
  • 昼休憩を必ず確保
  • 疲労兆候が出たら回数調整

これは制度ではなく
施術者の持続条件。


身体管理は患者の安心にもつながる

施術者が疲れていると👇

  • 冷静に判断できない
  • 説明が雑になる
  • 延長依頼の線引きが揺らぐ
  • 事故リスクが上がる

身体にゆとりがある方が、
制度判断も正確にできる。


判断軸⑦:「判断フロー」を持つことで迷いと消耗を防ぐ

結論
訪問鍼灸は制度理解だけでは運用できない。
毎回その場の感情で判断すると、後からしんどくなる。
だから「迷ったらこの順に判断する」というフローを決めておく。

※もし
「制度的には合っているのに、なぜかしんどい」
「説明しても関係が噛み合わない」
と感じる場合は、
判断そのものではなく“前提”がズレている可能性があります。

「正しいはずなのに噛み合わない──在宅鍼灸・訪問ケアで判断がズレる瞬間」

理由
患者の状態・家族の意向・金銭・距離・時間の変数が多く、
1つひとつを都度考えていると精神がすり減るから。


制度と現場判断をつなぐ「7つのチェック」

判断順は必ずこの順👇
※すべてYESなら実施。途中でNOなら調整か中止。

👉「訪問鍼灸の判断基準|延長や頻度の相談で迷わない手順」


①時間は守れるか?

→NOなら延長しない/次回に回す

②距離は適正範囲か?

→片道2km以内が現実ライン

③回数・負担は適正か?

→週1回を基本に慎重に増加

④支払い方法は共有できているか?

→都度払いが原則、例外は事前合意

⑤制度の線引きを超えていないか?

→家事・送迎などは拒否する

⑥身体に余力があるか?

→しんどい時は調整、休む判断も正当

⑦信頼関係が成立しているか?

→敬意の欠如があれば離脱も検討


この順番で判断する理由

  • ①〜③は時間と収益の基盤
  • ④〜⑤は制度と関係の基盤
  • ⑥〜⑦は継続の基盤

順番が入れ替わると失敗しやすい。

例:
身体が限界→でも断れない→延長→距離超え→精神消耗

制度理解より、判断順が大切。


明日からできる実務への落とし込み

患者台帳に👇をチェック欄として作る。

  • 時間
  • 距離
  • 回数
  • 支払い
  • 境界線
  • 体調
  • 敬意

巡回中にこれを確認し、
迷ったらどこで「NOが出たのか」を言語化するだけで判断負担が激減する。


■おわりに

今回の記事は、
「制度は理解しているが、現場判断で消耗している人」
に向けた内容でした。

もし、

  • 延長・頻度・距離
  • キャンセル
  • 敬意や関係性

を含めて 判断を一本の軸で整理したい場合は、
こちらに全体像をまとめています。

訪問鍼灸の判断基準|延長や頻度の相談で迷わない手順

制度理解は目的ではありません。

迷わず判断できるように軸を持つことで、
自分の身体と時間を守り、
患者との関係も長く続きます。

■関連記事(迷ったときに)

・判断基準の全体像を読みたいとき(YES/NOで線引きできる方法)
訪問鍼灸の判断基準|延長や頻度の相談で迷わない手順

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