訪問鍼灸の自費導入|断られない出し方と料金設計

訪問鍼灸を続けていると、いつか必ずこういう瞬間が来ます。

  • 保険の頻度・制度の上限で限界がある
  • 本人や家族は「もっと来てほしい」と言う
  • でも保険では増やせない
  • こちらは疲れてきている
  • けど「断ったら関係が壊れそう」で言えない

このときに出てくる選択肢が、自費導入です。

ただ、自費導入って多くの施術者が苦手です。
理由はシンプルで、「お金の話=嫌われそう」だから。

でも現場で起きている問題は、性格の問題じゃない。

保険という制度だけでは支えきれない領域が出てくる。
だから自費の選択肢を持っておくのは、むしろ自然です。

この記事では、訪問鍼灸の現場で
自費を“断られない形”で提案する流れと、料金設計の基準をまとめます。


自費導入は「稼ぐため」より「守るため」に必要

自費導入というと、

「儲けたいの?」
「お金を取るのは申し訳ない」

という空気が出やすい。

でも実際は逆で、現場の自費導入はこういう意味が大きい。

  • 保険内の限界を超える部分を整える
  • 安定した関係を続けるための“余白”をつくる
  • 施術者側が潰れないようにする

つまり、自費は「追加の利益」じゃなくて
破綻しないための安全装置みたいなもの。


自費導入が必要になる代表パターン

現場で自費の話が出るのは、だいたいこの4つです。

①回数を増やしたい(保険では増やせない)

  • 「週1じゃ足りない」
  • 「不安だから来てほしい」

②延長したい(保険の枠内では不十分)

  • 「今日は長めにして」
  • 「もうちょっとやって」

③家族の期待が大きい(介護の穴を埋めてほしい)

  • 「リハビリも一緒に見てほしい」
  • 「生活も少し手伝ってほしい」

④施術者側の限界(移動・疲労・気力)

  • 件数が増えてきて体力がもたない
  • 余白がなくなって判断が雑になる

※この④は特に重要で、ここを無視すると壊れます。


自費導入の前提:先に「保険でできること」を確認する

自費提案がこじれる原因のひとつが、

「最初から自費に誘導してる」

と受け取られること。

これを避けるには順番が大事です。

  1. まず「保険内でできる範囲」を整理
  2. 次に「本人の希望」を確認
  3. それでも足りない部分にだけ自費を提案

この順番を守るだけで、断られにくくなります。


断られない自費提案の基本は「選択肢として出す」

自費の話って、押すと終わる。
でも逃げすぎても伝わらない。

だからコツはこれです。

“お願い”じゃなく、“選択肢の提示”として出す


断られない言い方テンプレ(そのまま使える)

以下、現場でそのまま使える形にしておきます。


✅テンプレ①(回数を増やしたい場合)

「今の制度だと、保険で増やせる回数には上限があるんですよね。
ただ、〇〇さんの状態的には、もう少し頻度があった方が良いのは事実です。

なので選択肢として、
保険の枠はそのまま+追加分だけ自費という形も取れます。

“必須”ではないんですけど、
希望があればその形もできますよ。」


✅テンプレ②(延長希望がある場合)

「延長自体はできるんですけど、
保険の枠って“時間”で増える仕組みじゃないので、延長分は自費扱いになります。

ただ僕としては、
延長するよりも回数を分ける方が体には残りにくいことも多いです。

なので、

  • 延長(自費)
  • 回数を分ける(保険内の範囲)

どっちが合いそうか、一緒に決めましょうか。」


✅テンプレ③(家族や本人の期待が大きい場合)

「希望はよく分かります。
ただ制度上、保険でできる範囲には限界があって、全部をそこに乗せるのは難しいです。

だから現実的には、

  • “保険でできること”は保険内で
  • それ以上の部分は“自費で追加するかどうか”を選ぶ

この2択になります。

どちらが正しいというより、
〇〇さんに合う形を一緒に決めたいです。」


自費導入で一番やってはいけないこと

一番危ないのはこれ。

こちらの感情で説明すること

例:

  • 「こっちも大変なので」
  • 「これ以上は無理です」
  • 「忙しいので」

気持ちは正しい。
でもこれを言うと、自費提案が「感情への補償」になってしまう。

だから自費導入は、感情じゃなくてこう言う。

「制度上の限界」+「本人の希望」+「選択肢」


料金設計は「説明しやすさ」が最優先

自費は、値段の正解がない。

だからこそ、基準はこれ。

“相手が理解できる”料金設計かどうか

これができてないと、どれだけ安くても断られます。


料金設計の型(おすすめ)

現場で一番揉めないのは、この2つです。

①延長10分◯◯円

  • 分かりやすい
  • 不公平感が出にくい
  • 断りやすい(上限が作れる)

例:

  • 延長10分 1,000円
  • 延長20分 2,000円

②追加1回◯◯円(保険+自費のハイブリッド)

  • 頻度を増やしたい人向け
  • 訪問負担のコントロールがしやすい

例:

  • 追加1回 4,000〜6,000円

価格の目安(雑に決めてOK)

まずは細かい理屈より、運用できる方が大事。

目安の考え方:

  • 延長10分:1,000円前後
  • 追加1回:4,000〜8,000円
  • 月の上限:○回までを必ず決める

※上限を決めない自費は、依存が増殖する。


自費導入の本質:「依存」を増やさない設計

自費導入で多い落とし穴が、

追加した瞬間に「当然」になる

これ。

だから最初にここは言っていい。

「必要なら追加できます。
ただ、これはずっと増やすためのものではなくて、
今の状態を安定させるための“期間限定の選択肢”として考えています。」


まとめ:自費は“押し売り”じゃなく“関係を守る設計”

自費導入は、がめつさの話じゃない。

  • 制度だけでは支えきれない領域がある
  • 本人や家族の希望と、現実の限界がぶつかる
  • 施術者も潰れずに続ける必要がある

だから自費は、
お互いを守るための現実的な選択肢です。


▼ 関連記事(次に読む)

・判断に迷ったときの基準を整理したい
「訪問鍼灸の判断基準|延長や頻度の相談で迷わない」

・制度の全体像を先に押さえたい
→「【訪問鍼灸の制度はこれだけ知れば迷わない|現場判断の7つの軸】

・施術者側の身体や気力が限界に近い
→「訪問鍼灸を続けるための身体管理|疲労で判断を誤らないために