トレーナーのヒヤリハット|止めなかった爪

この記事は、
高校野球のトレーナー帯同中、
ケガではなく「条件」を止めなかったことで、
未来を削りかけた話
です。

避けられるのは、
・結果論の後悔
・「今いける」を優先する判断
・パフォーマンス理由で条件を通す事故
です。


現場の前提

高校野球のトレーナーとして帯同していた頃の話。

・春の甲子園出場
・前泊でホテル帯同
・翌日が試合
・相手は全国屈指の強豪校

前夜、
最後に施術したのは
2番手投手

当日、
150km/hを超える球速を記録した、
速球派のピッチャーだった。

エースは別にいるが、
試合展開次第では
多く投げる可能性がある立場


気づいていた違和感

主訴は、
右肘の張り。

右肩甲帯から上肢、
指先まで施術している時、
爪がかなり長いことに気づいた。

それとなく聞くと、
本人はこう言った。

「ボールの引っかかりがいいんです。
投げる瞬間、
パキっと爪が引っかかる感じが。」

パフォーマンス上の理由だった。


その場で起きていた判断

当時の自分には、
迷いがあった。

・試合前日
・強豪校
・我が強いタイプ
・自分はまだ若く、権威性もない

ここで言えば、
感覚やフォームを壊すかもしれない。

そう思って、
踏み込まなかった。

爪の状態は
「気づいていたが、止めなかった条件」
として、そのまま通した。


翌日の試合

エースが先発。

試合途中、
5〜6回から登板。

自己最速を記録する。

ただ、
途中でユニフォームに
血が飛び散っているのが見えた。

交代。

爪が割れていた。

試合は、
そのまま敗戦。


ヒヤッとした本当の理由

危なかったのは、
爪が割れたことではない。

前夜、
「止める判断」を置かなかったこと。

ケガの兆候でもない。
痛みの訴えでもない。

パフォーマンスを理由に、
未来に影響する条件を
そのまま通した判断。


今なら、こう判断する

今なら、
あの場面でやるのはこれ。

・爪を伸ばしたまま投げるデメリット
・割れる可能性
・試合中断や交代のリスク

可能性として提示する。

その上で、

・適正な爪の長さ
 指先から白い部分を
 1〜1.5mm残す程度

を具体的に伝える。

最終的に選ぶのは、
本人。

ただし、
条件は整理して渡す。


まとめ

この話で減らすべき判断は、
「感覚を尊重するかどうか」ではない。

パフォーマンス理由の“クセ”を、
安全側に翻訳せずに通す判断。

今いけるか、ではなく。
この条件で、
未来は守れるか。

そこを置かずに進むと、
ヒヤリは
結果になってからやってくる。


関連記事

技術じゃない理由で、ヒヤッとした瞬間──歩いて来た外傷
技術じゃない理由で、ヒヤッとした瞬間──線を引かなかった指導
技術じゃない理由で、ヒヤッとした瞬間──「鍼が好き」の定義がズレていた