訪問鍼灸は「治す仕事」じゃない。現場で一番やっていること


結論

多くの人が思っているほど、訪問鍼灸の現場は「治す」ことに時間を使っていません。
実際に一番やっているのは、事故や悪化が起きないように現場を整えることです。

痛みをゼロにすることよりも、
これ以上悪くならない配置・動線・判断をつくること
それが、訪問鍼灸の現場で最も重要な仕事です。


なぜ「治す」より「整える」なのか

訪問の現場では、
・施術直後は楽になる
・数日後に元に戻る
・原因が分からないまま再発する

この繰り返しがよく起きます。

ここで多くの人は、
「まだ施術が足りないのでは」
「もっと強くした方がいいのでは」
と考えがちです。

しかし、現場で見ている限り、
再発や悪化の原因は身体そのものではないことがほとんどです。

問題は、
施術後に戻っていく生活のルートにあります。


現場で実際に起きていること

訪問先では、身体を触る前に、次のようなことを確認します。

  • 家具の配置
  • 立ち上がりや歩行の動線
  • いつもと違う「非日常の配置」
  • 家族や介護者の関わり方
  • 本人の判断のクセ

これらが少し変わるだけで、
転倒・痛みの再発・不安の増幅が起きます。

実際、
「身体は変わっていないのに、配置が変わっただけで事故が起きる」
という場面は、現場では珍しくありません。

※このあたりは、
👉「施術で良くなっても崩れる人へ|現場で見ている『生活動線』の落とし穴」
でも詳しく書いています。


訪問鍼灸で一番難しい「判断」

訪問の現場で一番難しいのは、
「何をするか」ではありません。

**「何をしないかを決めること」**です。

  • これ以上触らない
  • 今日は深追いしない
  • 改善より悪化防止を優先する

この判断は、技術よりも勇気が要ります。

「まだ足りない」と言われたときに、
「今はこれ以上いじらない方が安全です」と伝える。

これは、治療技術ではなく、
現場全体を見た判断の仕事です。


治そうとすると壊れる理由

訪問の現場では、
「治そう」とするほど、状況が不安定になることがあります。

理由はシンプルです。

  • 介入が増える
  • 生活とのズレが大きくなる
  • 判断が複雑になる
  • 家族の不安が増える

結果として、
身体より先に、現場が疲弊します。

一方で、
「整える」ことを優先すると、状況は長く安定します。

  • 動線を固定する
  • 判断を減らす
  • 役割を明確にする
  • 触らない選択をする

すると、
「良くしなくても、悪くならない」状態が続きます。


訪問鍼灸は“現場の調整役”

訪問鍼灸は、
マッサージや鍼をする仕事と思われがちです。

しかし実態は、
現場全体の調整役に近い仕事です。

  • 身体
  • 生活
  • 環境
  • 家族
  • 判断

これらをまとめて見て、
事故が起きない状態を保つこと

そのために、
「治す」よりも
「戻らせない」ことを優先しています。


技術より大事なもの

訪問鍼灸で一番大事なのは、
技術の高さではありません。

  • どこで止めるか
  • どこまで介入しないか
  • 誰の判断を軽くするか

こうした判断の積み重ねが、
現場を静かに安定させます。

※判断や条件設計については、
👉「訪問鍼灸が続かない家庭の初期サイン」
👉「訪問鍼灸・在宅ケアの“断り方”テンプレ」
でも具体的に触れています。


まとめ

訪問鍼灸は、
「治す仕事」ではありません。

  • 痛みをゼロにするより
  • 事故を防ぐ
  • 悪化を止める
  • 現場を壊さない

そのために、
整える・触らない・判断する仕事です。

治そうとすると壊れる。
整えると続く。

これが、
現場で一番多く使っている判断です。


最後に

もし、

  • 良くなってもすぐ戻る
  • 何が正解か分からなくなっている
  • 在宅や介護の判断で疲れている

そんな違和感があるなら、
「身体」ではなく「現場」を見直すタイミングかもしれません。

関連記事(あわせて読むと理解が深まります)

「施術で良くなっても崩れる人へ|現場で見ている『生活動線』の落とし穴」

「訪問鍼灸が続かない家庭の初期サイン」

「訪問鍼灸・在宅ケアの“断り方”テンプレ」