訪問鍼灸で失敗を叱ると本当のことを言ってもらえなくなる理由

訪問鍼灸や在宅ケアの現場では、患者さんや利用者さんが、以前に注意したことをまた繰り返してしまう場面があります。

危ない起き上がり方。

転倒しそうな動き。

置き場所や動線の乱れ。

支援者側からすると、「前にも伝えたのに」「だから言ったのに」と言いたくなることがあります。

実際に危ないし、次は事故につながるかもしれない。

だからこそ、強く伝えたくなる気持ちは自然です。

ただ、失敗を叱ると、その場では正しいことを言えたように見えても、次から本当のことを言ってもらえなくなることがあります。

この記事では、訪問鍼灸で失敗を叱ると情報が上がらなくなる理由と、失敗を次の安全につなげるための関わり方を整理します。

この記事で避けられること

この記事では、

  • 患者さんや利用者さんの失敗を、そのまま指導の材料にしてしまうこと
  • 「だから言ったのに」で終わらせて、次の情報が上がってこなくなること
  • 正しさを通したつもりで、実際には関係と安全性を落としてしまうこと

を避けるための判断を置いています。

訪問鍼灸では、その場で正しいことを言うより、次も本当のことを話してもらえる関係を残す方が大事な場面があります。

事故や判断のズレについては、以下の記事でも整理しています。

訪問鍼灸で事故が起きる理由|技術より判断がズレるとき

誰向けか

  • 訪問鍼灸をしている人
  • 訪問看護、介護職など、生活の場で指導をする人
  • 転倒、服薬、起き上がり、移動などで繰り返し注意を伝える立場の人

起き上がりや夜間の動作など、具体的なヒヤリハットを整理したい方は、以下の記事も参考にしてください。

訪問鍼灸のヒヤリハットまとめ|事故を防ぐために見ておきたい現場の判断ミス

現場では「言ったのに」が出やすい

支援職や施術者がよく失敗する場面があります。

たとえば、以前から危ないと伝えていた動きや置き方を、相手がまた繰り返してしまった時です。

その時、教える側はつい、

だから言いましたよね。
またそんな置き方してるんですか。
危ない目に合うと分かりますか。今度から気をつけてください。

という方向に行きやすいです。

気持ちは分かります。

実際に危ないし、前にも伝えているし、今度こそ分かってほしいと思うからです。

でも、この場面で正しさを前に出しすぎると、だいたいうまくいきません。

失敗を叱ると起きがちなこと

患者さんや利用者さんが失敗した時、支援者側はその失敗を見て、

ほら、やっぱり危なかった。
これで分かったはず。
次からは自分の言うことを聞くだろう。

と考えがちです。

そして、その失敗にフォーカスして指導を強めます。

でも、相手の側で起きているのは、別のことです。

失敗したことそのものより、

失敗を報告した時にどう扱われたか

の方が残ります。

その結果、次からは、

  • 失敗を教えてくれなくなる
  • 本当のことを隠すようになる
  • 「あの人は怖い」「嫌な人だ」と感じる

こういう方向に進みやすくなります。

判断が伝わらない背景については、以下の記事でも整理しています。

訪問鍼灸で判断が伝わらない理由|本人・家族との前提のズレ

正しいことより、次も情報を渡してもらえるか

ここで見落としやすいのは、支援者側は、

正しいことを言っている

つもりだということです。

でも現場では、正しいことを言ったかどうかより、

次も情報を渡してもらえるかどうか

の方が大事な場面があります。

たとえば、

  • 転びそうになった
  • 危ない起き上がりをした
  • 夜間に無理をした

こういう情報は、次の事故を防ぐためには上がってきてほしい情報です。

そこで「だから言ったのに」が前に出ると、相手は、

  • 言うと怒られる
  • また責められる

と学びます。

すると、支援者側は正しさを通したつもりでも、実際には安全に必要な情報が上がらなくなります。

訪問鍼灸でその場の判断を引き受けすぎない考え方は、以下の記事でも整理しています。

訪問鍼灸でその場で決めない理由|条件負けしない判断の戻し方

失敗に対して、正しさより先に情報を受け取る

この手の場面では、まず感情を入れず、その出来事をただの情報の1つとして扱う方が安全です。

たとえば、

怖かったですね。
大丈夫でしたか。無事でよかったです。
では、次はこう置くと安全だと思うので、一緒にやってみましょう。

このくらいで十分です。

逆に、失敗そのものを使って自分の指導を正当化しようとすると、次の報告が途切れます。

支援の場では、その一回で分からせることより、次も本当のことを話してもらえることの方が大事です。

生活の中で何がズレているかを見る視点については、以下の記事でも整理しています。

訪問鍼灸で身体を見る前に確認すること|生活のズレを見る理由

優しくするだけでも足りない

ただし、ここで誤解しやすいのは、優しく受け止めればそれで終わりではないことです。

「そうなんですね」

「怖かったですね」

で終わるだけでは、次の事故は防げません。

大事なのは、受け止めたあとに次の安全行動に繋げることです。

たとえば、

  • 置き方を変える
  • 起き上がりの順番を変える
  • 環境を調整する
  • 家族や他職種と共有する

こういう具体の一手まで置く。

つまり、

  • 脅しで動かさない
  • でも受容だけで終わらせない

この間が必要です。

必要に応じて家族やケアマネへ共有する時は、以下の記事も参考にしてください。

ケアマネが読みやすい報告書とは|訪問鍼灸で伝えるべきこと

認知機能や自己効力感も一緒に見る

この手の指導で忘れやすいのは、相手が、

分かっていてもできない

可能性です。

認知機能の低下があるかもしれない。

習慣化した動きが変えにくいのかもしれない。

何度も失敗して、自己効力感が下がっているのかもしれない。

それなのに、失敗を材料にしてさらに圧をかけると、相手は、

できない自分をまた確認させられる

だけになります。

支援者が見るべきなのは、その失敗が、

  • 注意不足なのか
  • 理解の問題なのか
  • 環境の問題なのか
  • 能力の問題なのか

そこです。

福祉用具や環境調整の気づきについては、以下の記事でも整理しています。

訪問鍼灸師が福祉用具に気づいた時|提案ではなく“共有”にする考え方

今ならこう対応する

今なら、こういう場面ではまず失敗そのものを責めません。

先にやるのは、

  • 怪我がないか
  • 何が起きたか
  • どこで危なくなったか
  • 次に変えるなら何か

を整理することです。

そして、言葉としては、

怖かったですね。
無事でよかったです。

から入ります。

そのうえで、

では次はこうしましょう。

と、安全行動に繋げます。

一回で分からせることより、次も報告してもらえる関係を残す。

その方が、結果として事故を減らしやすいです。

まとめ

この記事で残す判断は1つです。

失敗を使って指導を正当化すると、次から本当のことを言ってもらえなくなる。

支援者が正しさに飲まれそうになる気持ちは分かります。

でも、そこで「だから言ったのに」に寄ると、情報は止まります。

必要なのは、失敗を責めることではありません。

失敗を情報として受け取って、次の安全に変えることです。

支援の場では、分からせることより、次も話してもらえることの方が大事な場面があります。

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失敗対応や判断の線引きで迷っている方へ

訪問鍼灸では、転倒しかけた、危ない動きをした、何度も同じことを繰り返すなど、支援者側の正しさが強く出やすい場面があります。

ただ、その場で分からせることを優先すると、次から本当のことを言ってもらえなくなることがあります。

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