訪問鍼灸で本人の訴えをそのまま施術判断に使わない理由
訪問鍼灸や在宅ケアの現場では、本人から家族への不満を聞くことがあります。
「家族が来てくれない」
「何もしてくれない」
「ひどい子どもたちだ」
そう言われると、支援者や施術者は、つい本人の側に立って受け止めたくなります。
もちろん、本人がそう感じていることは軽く扱わない方がいいです。
ただし、その訴えをそのまま家族評価に使ってしまうと、本人と家族のあいだに余計なわだかまりを作ることがあります。
この記事では、訪問鍼灸で本人の訴えをそのまま施術判断に使わない理由と、本人の感情と家族の行動を分けて見る考え方を整理します。
目次
この記事で避けられること
この記事では、
- 本人の「家族が来てくれない」「何もしてくれない」という訴えを、そのまま家族評価に使ってしまうこと
- 支援者や施術者が中途半端な共感で、本人と家族のわだかまりを増やしてしまうこと
- 本人の感情と事実確認を分けずに介入してしまうこと
を避けるための判断を置いています。
本人の訴えをどう受け取るかは、施術内容だけでなく、家族対応や他職種連携にも関わります。
判断が伝わらない背景については、以下の記事でも整理しています。
誰向けか
- 訪問鍼灸をしている人
- 訪問看護、介護職など、本人と家族の両方に関わる人
- 本人の訴えと家族の実際の動きが噛み合わない場面をよく見る人
- 本人に共感しながら、家族への介入の線引きで迷う人
現場では「家族が何もしてくれない」という訴えは珍しくない
施設でも在宅でも、本人から、
家族が来てくれない。
何もしてくれない。
ひどい子どもたちだ。
という訴えを聞くことがあります。
こういう話は、支援の現場では珍しくありません。
しかも、その言い方がかなり強いこともあります。
そのため、関わり始めた側はつい、
- 家族関係が悪いのかもしれない
- 本当に何もしていないのかもしれない
と受け取りやすくなります。
ただ、この時点で家族評価まで進めるのは、少し早いです。
本人の訴えと、家族の実際の動きは、分けて見る必要があります。
起きがちなこと
実際に関わっていると、分かることがあります。
家族は家族で、かなりちゃんと動いていることがあります。
- 面会に来ている
- 必要な手続きをしている
- 買い物や受診の調整をしている
- 施設や支援者とも連絡を取っている
それでも本人は、
来てくれない。
何もしてくれない。
と訴えることがあります。
この時、本人が嘘をついている、と単純に切るのも違います。
- 行動制限がある
- 認知機能が落ちている
- 感情の向かう先が少ない
- 不満や寂しさを受け止めてもらえる場所が家族しかない
そういう条件が重なると、本人にとっては「来ていない」「何もしてくれない」と感じること自体は事実になります。
生活背景や認知機能、本人の受け止め方を見る視点は、以下の記事でも整理しています。
違和感|判断が必要な場面
ここで難しいのは、本人の訴えが感情としては本物であっても、それをそのまま家族の評価には使えないことです。
本人はそう感じている。
それは軽く扱わない方がいい。
でも同時に、家族が本当に何もしていないのかは別で見る必要があります。
この2つを分けないまま、支援者や施術者が、
家族はもっと来た方がいいのでは。
もう少ししてあげてもいいのでは。
という空気を出したり、家族に対して微妙な圧をかけたりすると、その場では正しいことを言っているつもりでも、関係だけが悪くなります。
本人・家族・支援者の期待がズレる構造については、以下の記事でも整理しています。
本人の訴えは受け取る。家族評価は別で見る
本人の訴えは受け取る。
家族評価は別で見る。
この切り分けがかなり大事です。
本人の、
来てくれない。
何もしてくれない。
は、まず感情として受け取ります。
そう感じるんですね。
寂しいんですね。
そう思うくらいしんどいんですね。
ここまでは必要です。
ただ、その次に、
だから家族が悪い。
にすぐ行かない。
本人の感情の事実と、家族の行動の事実は、同じではありません。
ここを混ぜると、支援者の中途半端な介入だけが残ります。
家族対応や介護保険外の立場でどこまで関わるかは、以下の記事でも整理しています。
介護保険外の訪問施術者はどこまで関わるべきか|ケアマネから見た入り込みすぎのライン
本人と家族は、背景が違う
本人には本人の時間があります。
- できなくなったこと
- 動けなくなったこと
- 待つ時間が長いこと
- 会いたい時に会えないこと
その中で、寂しさや怒りが家族に向きやすくなることはあります。
一方で、家族には家族の生活があります。
- 仕事
- 家庭
- 距離
- 疲労
- もともとの関係
- 罪悪感
- できる範囲でやっている実感
この背景は、本人と家族で全く違います。
だから、本人と家族は、同じ出来事を全く違う意味で見ていることがあります。
ここを見ずに、
本人がそう言っていたから。
だけで支援者が家族に触ると、わだかまりだけが増えます。
優しいだけでも足りない
ここで誤解しやすいのは、本人の訴えをただ受け止めて終わればいい、という話でもないことです。
本人が家族への不満を強く訴える時、必要なのは、
そうですよね。
と全面的に乗ることではありません。
必要なのは、感情を受け止めながら、家族評価とは切り離すことです。
たとえば、
- そう感じるんですね
- 寂しいですよね
- 今はそう思うくらいしんどいんですね
とは言っていい。
でも、そこから先は、
- 家族も実際にはどう動いているか
- 今ここで何を調整すべきか
を別で見た方がいいです。
本人の訴えを他職種へ共有する時は、感情と事実を分けることが大事です。
今ならこう対応する
今なら、本人が家族への不満を訴えた時は、まず感情として受け取ります。
ただし、その場で家族評価はしません。
先に見るのは、
- 本人は何を求めているのか
- 寂しさなのか、不安なのか、怒りなのか
- 家族は実際にはどう動いているのか
- ここで自分が家族に介入する意味はあるのか
このあたりです。
そして、自分が中途半端に入ることで、本人と家族の間に余計な線を引くだけなら、そこは触りすぎないようにします。
想像力が低いまま、分かったつもりで家族に介入すると、残るのは支援ではなく、わだかまりです。
判断をその場で決めすぎない考え方は、以下の記事でも整理しています。
まとめ
この記事で残す判断は1つです。
本人の訴えは受け取る。でも、そのまま家族評価には使わない。
本人が「来てくれない」と感じていることは、その人の中では事実です。
でも、それと家族が本当に何もしていないかどうかは別です。
支援者や施術者がそこを混ぜると、中途半端な共感だけが残って、関係を悪くしやすくなります。
だからこそ、感情を受け取ることと、家族を評価することは分けて考える必要があります。
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