介護職が訪問施術者に伝えると助かる情報|痛み・移乗・トイレ動作の見方

訪問鍼灸・訪問マッサージで施設へ伺うと、介護職さんから身体の状態について相談を受けることがあります。

「最近、腰が痛いと言っています」
「立つ時に顔をしかめます」
「トイレ介助が少し大変になりました」
「右足を出しにくそうです」

こうした情報は、訪問施術者にとって大切です。

施術時間は限られており、訪問した時に本人さんの症状が出ているとは限りません。

本人さんが痛みをうまく説明できないこともあります。

そのため、日常生活を見ている介護職さんからの情報が、身体の状態を考える手がかりになります。

ただし、介護職さんが痛みの原因や病名まで判断する必要はありません。

いつから変わったのか。
どの動作で困っているのか。
普段と何が違うのか。

この三つが分かるだけでも、施術者は確認する場所や動作を絞りやすくなります。

この記事では、介護職さんが訪問施術者へ伝えると役立つ情報を、痛み・移乗・トイレ動作を中心に整理します。

介護職さんへ身体評価を求める記事ではなく、普段見ている変化をそのまま共有するための記事です。

介護職さんが持っているのは生活の中の情報

訪問施術者が本人さんを見られるのは、週に数回、限られた時間です。

一方で介護職さんは、起床、食事、排泄、入浴、移動など、生活の中で本人さんの動きを見ています。

施術者が持っている身体の専門知識と、介護職さんが持っている生活上の情報は、役割が違います。

訪問施術者が確認しやすいこと 介護職さんが気づきやすいこと
圧痛や関節の動き 朝だけ動きにくい
施術時の身体反応 トイレの時に痛がる
立ち上がりや歩行の一場面 数日前から介助量が増えた
本人さんから聞いた訴え 普段と表情や動きが違う

訪問時に問題なく歩けても、朝の起き上がりでは痛みが出ているかもしれません。

施術中は痛みを訴えなくても、ズボンを上げる時に身体を支えにくくなっているかもしれません。

施術者だけでは見えない時間の情報を補えるのが、介護職さんからの共有です。

介護職さんから見て「何をしているか分からない外部職」にならないための考え方は、こちらの記事で整理しています。

介護職から見た訪問鍼灸|現場が困るのは“何をしているか分からない外部職”

伝えるのは「いつ・どの動作・普段との違い」

介護職さんから訪問施術者へ伝える内容は、詳しい身体評価でなくても構いません。

基本は、次の三つです。

確認すること 伝え方の例
いつから 昨日の夕方から、今朝から、数日前から
どの動作で 立ち上がる時、右足を出す時、ズボンを上げる時
普段との違い 一人介助だったのが二人必要、歩く距離が短くなった

たとえば、

「腰が悪そうです」

だけでは、施術者はどの場面を確認すればよいか分かりにくいことがあります。

一方で、

「今朝から、ベッドから立ち上がる時に腰を押さえています。昨日までは一人介助でしたが、今日は身体を起こすところから支えが必要でした」

と伝わると、施術者は起き上がりや立ち上がりを確認できます。

正確な専門用語よりも、場面と変化が分かることが大切です。

痛みは強さより、起きた場面を伝える

本人さんが「痛い」と話している時、痛みの強さを聞くことがあります。

ただ、認知機能が低下している方や、言葉で表現することが難しい方では、数字での評価が安定しないことがあります。

その場合は、痛みが起きた場面を伝える方が役立ちます。

分かりにくい伝え方 施術者が確認しやすい伝え方
腰がかなり痛そうです ベッドから身体を起こす時に腰を押さえます
右膝が悪いです 立った直後に右膝を曲げず、左へ体重を逃がします
肩が痛いと言っています 着替えで右腕を袖に通す時に顔をしかめます
今日は全身がしんどそうです 食堂まで歩かず、途中で座りたがりました

痛みの原因を考えて伝える必要はありません。

いつ、何をした時に、どのような反応があったかを伝えます。

本人さんが痛いと言っていなくても、普段とは違う表情や動きがあれば、それも共有材料になります。

施術後に介護職さんへ何を返すかについては、こちらの記事で整理しています。

介護職への訪問鍼灸の申し送り|その日の介助・見守りに使える伝え方

移乗は、どの瞬間に介助量が増えたかを見る

「移乗が大変になった」という情報も、訪問施術者にとって重要です。

ただ、移乗には複数の動作が含まれています。

身体を前へ倒す。
足を床へ置く。
立ち上がる。
方向を変える。
椅子や車椅子へ座る。

どの場面で介助量が増えたのかによって、施術者が確認する動作も変わります。

介護職さんが見た変化 伝え方の例
前へ身体を倒せない 立つ前に身体を前へ出せず、後ろへ残ります
足へ力が入りにくい 立ち上がる時に膝が崩れそうになります
方向転換が難しい 車椅子へ向きを変える時に足が止まります
座る時に不安定 椅子へゆっくり座れず、後ろへ倒れ込むようになります

「最近、移乗が全体的に悪い」とまとめるより、困る瞬間を一つ伝える方が施術者は確認しやすくなります。

ただし、介護職さんへ新しい介助方法をその場で実行してもらうこととは別です。

訪問施術者が見えたことを共有し、介助方法の変更が必要であれば、施設内の責任者やリハビリ職、看護師などへつなぎます。

施術者が施設職員さんへ指示を残す問題については、こちらの記事で整理しています。

訪問施術者の声が大きい・説明を施設に丸投げする|認知症対応型施設で困られる関わり

トイレ動作は一つにまとめず分けて伝える

トイレ動作には、移動、立ち上がり、方向転換、衣服操作、着座など、多くの動きがあります。

そのため、「トイレが大変になった」という情報だけでは、どこで困っているのか分かりにくいことがあります。

介護職さんは、普段の介助の中で、どの場面が変わったかを見ています。

トイレ動作の場面 共有例
トイレまでの移動 途中で足が止まり、休憩が必要になりました
便座への方向転換 右へ向く時にふらつきが強くなりました
衣服を下ろす 片手を離すと立位を保てなくなりました
便座から立つ 手すりを持っても、一度では立てなくなりました
衣服を上げる 腰を伸ばした状態を保てず、支えが必要になりました

トイレ動作の変化は、本人さんの生活や介護負担に直接影響します。

訪問施術者が確認する価値のある情報ですが、施術者だけで介助方法を決めるものでもありません。

身体の状態を確認し、施設側へ見えたことを返す。

必要に応じて、施設内の看護師やリハビリ職、ケアマネジャーさんなどへ共有する。

その役割分担が大切です。

原因を決めず、見たことをそのまま共有する

日常の中で変化があると、原因を考えたくなります。

筋力が落ちたのではないか。
関節が硬くなったのではないか。
認知症が進んだのではないか。
本人さんがやる気をなくしたのではないか。

ただ、同じ動作の変化でも、原因は一つとは限りません。

痛み、疲労、不安、眠気、環境の変化、体調などが重なっていることもあります。

介護職さんが原因を決める必要はありません。

訪問施術者へは、見たことをそのまま伝えます。

原因を決めた表現 見たことを伝える表現
筋力が落ちています 昨日から一度で立てず、二回目で立っています
やる気がありません 今朝は歩く声かけを三回断っています
右足が悪くなっています 歩き始めに右足が出にくく、左へ傾きます
認知症が進んでいます 昨日から立ち上がる手順が分からず、声かけが増えました

見たことと推測を分けて伝えると、施術者も状態を確認しやすくなります。

また、急に大きな変化が出た時や、普段とは明らかに違う状態がある時は、訪問施術者だけに伝えて終わらず、施設内の看護師や責任者にも共有します。

訪問施術者は、施設内の医療・介護判断を一人で引き受ける立場ではありません。

地域連携の中で訪問施術者がどのように情報を返すかについては、こちらの記事で整理しています。

訪問鍼灸は地域連携に入れているのか|カンファに呼ばれない外部職から抜け出すには

まとめ

介護職さんが訪問施術者へ伝える情報は、専門的な身体評価でなくても構いません。

大切なのは、

いつから変わったのか。
どの動作で困っているのか。
普段と何が違うのか。

この三つです。

痛みの強さだけでなく、起き上がりや着替えなど、痛みが出た場面を伝える。

移乗が難しくなった時は、立ち上がり、方向転換、着座のどこで介助量が増えたかを伝える。

トイレ動作は一つにまとめず、移動、衣服操作、立ち座りに分けて伝える。

そして、原因や病名を決めず、見たことをそのまま共有する。

介護職さんは、身体の原因を判断する人ではありません。

訪問施術者が見られない生活時間の変化を伝えられる人です。

日常の中で見えた一つの変化が伝わるだけでも、施術者は確認する動作を絞り、施設へ必要な情報を返しやすくなります。

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