訪問鍼灸・訪問マッサージで施設に紹介料を払っていいのか|療養費で超えてはいけない線
①この記事で避けられること(読む理由)
この記事では、
・施設営業そのものと、紹介料を混同すること
・「顧問料」「相談料」「業務委託料」なら安全だと思い込むこと
・施設に入れば効率よく稼げる、という話だけで制度上の線を越えてしまうこと
を避けるための判断を置いています。
この記事では、訪問鍼灸・訪問マッサージをまとめて「訪問施術」として扱います。
実態としては、施設集中型の問題は訪問マッサージで起こりやすい面があります。
ただし、療養費制度上は、はり・きゅうも無関係ではありません。
令和8年度のあはき療養費改定案でも、同一日・同一建物で多数に施術する場合の訪問施術料4・5の新設、特定施設での訪問施術が9割以上の場合の80%算定、月16回以降の50%算定などが示されています。つまり、施設集中・同一建物多数施術は、制度側も見ている論点です。
②誰向けか
・訪問鍼灸、訪問マッサージを始めたい人
・施設営業を考えている人
・施設から紹介を受ける時の線引きが分からない人
・紹介料、顧問料、相談料、業務委託料の境界線が気になる人
③施設営業そのものは悪ではない
まず、施設営業そのものが悪いわけではありません。
訪問施術では、
施設、ケアマネ、介護職、家族と関わる場面があります。
施設に入居している方に施術が必要なこともあります。
施設職員と情報共有することもあります。
家族説明が必要なこともあります。
ケアマネに状態を伝えることもあります。
これは普通に必要な連携です。
問題は、
施設と関係を作ることではありません。
問題は、
患者紹介の見返りとして、施設側に金銭的なメリットを渡すこと
です。
ここを混ぜると、
施設営業と紹介料の話がぐちゃぐちゃになります。
④紹介料を払うと、何が問題になるのか
療養費は、
患者さんに必要な施術に対して支給されるものです。
本人に必要性がある。
医師の同意がある。
家族や本人が理解している。
施術内容と請求内容が一致している。
この前提が必要です。
ところが、
施設にお金を払い、
その代わりに入居者を紹介してもらう形になると、
話が変わります。
本人の必要性より、
施設と業者側の利益が先に立ちやすくなります。
厚労省の疑義解釈資料では、施術所が集合住宅、施設、医療機関、請求代行業者などに紹介料その他の経済上の利益を提供し、患者紹介を受けた結果行われた施術については、療養費の支給対象外とされています。
つまり、
1人紹介ごとにいくら払う。
施術回数に応じて払う。
売上に応じて払う。
施設へ手数料を戻す。
こういう形はかなり危ない。
施設に紹介してもらうこと自体ではなく、
患者紹介と金銭的利益が結びつくこと
が問題になります。
⑤「顧問料」「相談料」「業務委託料」ならいいのか
ここは現場でよく起きそうな話です。
紹介料と書くと危ない。
では、顧問料ならどうか。
相談料ならどうか。
業務委託料ならどうか。
こういう発想は出てくると思います。
でも、見られるのは名前ではなく実態です。
本当に、
研修、相談業務、書類確認、記録支援、事務代行などの実態がある。
金額も業務内容に対して妥当。
患者紹介の人数や施術回数、売上と連動していない。
患者さんや家族が自由に施術者を選べる。
こういう形なら、
適正な業務委託として説明できる余地はあるかもしれません。
実際、療養費支給申請書の内容確認や作成代行など、実際の業務に対して適正な費用を支払うこと自体は、直ちに経済上の利益の提供には当たらないという整理もあります。
ただし、
実態が患者紹介の対価なら別です。
顧問料という名前でも、
紹介人数に応じて金額が変わる。
相談料という名前でも、
施術回数に応じて金額が変わる。
業務委託料という名前でも、
売上に応じて施設へ戻している。
こうなると、
名目を変えても、紹介料と見られる可能性があります。
名目を変えたから安全、
ではありません。
⑥施設集中型はなぜ危ういのか
施設にまとめて入れると、
たしかに効率は上がります。
移動時間は減ります。
同じ建物で複数人を見られます。
一度導線ができれば、件数も増えやすい。
そこだけ見ると、
かなり魅力的に見えます。
でも、制度側はそこを見ています。
令和8年度改定案では、同一日・同一建物で10人以上19人以下、20人以上の場合の訪問施術料が新設され、人数が多い場合の1人あたり料金が下がる設計になっています。また、特定施設での訪問施術が9割以上の場合は、その施設分の料金を80%相当で算定する案も出ています。
つまり、
施設でまとめて多人数を施術するほど、
移動効率は上がる。
でも、
1人あたりの算定額は下がりやすい。
さらに、
特定施設への依存が強いほど、
制度改定の影響を強く受けやすくなる。
ここが危ういところです。
施設集中型は、
最初は速いです。
でも、制度が変わった時に弱い。
施設との関係が切れた時にも弱い。
監査や返戻、不支給のリスクも抱えやすい。
効率が良いように見えて、
実はかなり依存度の高いモデルになります。
⑦利益を残そうとすると、どこが削られるか
施設にお金を払う。
営業コストがかかる。
同一建物で人数が増えるほど単価は下がる。
施設依存が強いと減算もあり得る。
そうなると、
利益を残す場所は限られます。
削られやすいのは、
現場です。
・施術時間
・記録
・説明
・評価
・家族対応
・施術者の報酬
このあたりが薄くなりやすい。
そうなると、
もう臨床というより、
療養費を原資にした施設内オペレーションに近くなります。
もちろん、
施設で施術している人が全員そうだという話ではありません。
施設で必要な施術を、
きちんと説明し、記録し、連携して行っているところもあると思います。
ただ、
施設導線を取り、
件数を詰め込み、
紹介料や手数料を戻し、
利益を残すために現場を削るなら、
それはかなり危うい構造です。
⑧小さく長くやるなら、紹介料より信頼を積む
訪問施術は、
施設に入れば終わりではありません。
本来は、
・本人に必要性があるか
・家族が理解しているか
・医師同意があるか
・ケアマネや施設に説明できるか
・施術内容と請求内容が一致しているか
・記録が残っているか
を積み上げる仕事です。
紹介料で導線を買えば、
早く広がるかもしれません。
でも同時に、
制度改定、監査、不支給、返戻、信用低下のリスクも抱えます。
時間はかかっても、
一件ずつ説明する。
記録する。
判断材料を返す。
ケアマネや家族に共有する。
その方が遅いです。
でも長く残りやすい。
小さく長くやるなら、
紹介料より信頼を積む方がいいと思っています。
まとめ
この記事で残す判断は1つです。
施設営業そのものが悪いのではない。
問題は、患者紹介と金銭的利益が結びつくことです。
施設と連携することはあります。
施設に入居している方に訪問施術が必要なこともあります。
でも、
紹介料、顧問料、相談料、業務委託料などの名目で、
実態として患者紹介の対価になっているなら危ない。
名目ではなく、実態が見られます。
施設に入れば件数は増えるかもしれません。
でも、施設集中が強くなるほど、制度改定の影響も受けやすくなります。
小さく長くやるなら、
導線を買うより、
一件ずつ信頼を積む方がいい。
訪問施術は、
患者導線を買う仕事ではなく、
必要性、説明、記録、判断を積み上げる仕事です。
訪問施術の始め方で迷っている方へ
訪問鍼灸・訪問マッサージは、
営業先、施設連携、同意書、レセプト、請求内容など、
最初に判断を間違えると後で苦しくなることがあります。
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