訪問鍼灸のヒヤリハット|圧迫骨折を疑った腰痛が、骨転移だった話

①この記事で避けられること(読む理由)

この記事では、
・回復してきた利用者の新しい痛みを、いつもの経過として流してしまうこと
・施設入所後の腰痛を、廃用や筋力低下だけで説明してしまうこと
・受診につなげるべき痛みを、施術で様子を見る判断

を避けるための判断を置いています。

②誰向けか

・訪問鍼灸をしている人
・訪問看護、介護職で施設入所者に関わる人
・高齢者の腰痛を日常的に見ている人

③現場の前提

長年付き合いのあった患者さんの話です。

もともとは、私が分院長をしていた頃から関わりのある方でした。
その後、訪問で開業してからも、また来てほしいという依頼があり、伺うことになりました。

最初は自宅で施術していましたが、
病気で入院し、一時はもう関わることはないかもしれないと思っていました。

その後、意識が回復し、施設に入ることになった際に、
本人やご家族から再び来てほしいという話があり、
施設の許可も得て、訪問を再開しました。

再開当初は、
歩行も、ベッドから車椅子への移乗もできない状態でした。

そのため、
上肢や体幹の廃用を防ぐような介入から始め、
今後の介助が少しでもしやすいように、股関節の可動域も意識しながら関わっていました。

もちろん、鍼灸施術も行っていました。

④起きたこと

その後、本人の回復力もあったのか、
半年ほどすると、介助ありで10メートルほど歩けるくらいまで戻ってきました。

ところが、そこからさらに半年ほどして、
今度は腰の強い痛みを訴えるようになりました。

痛みの出方は、
動作開始時の強い痛みが目立ち、
棘突起直上の圧痛もありました。

その時点で、
圧迫骨折の可能性をまず鑑別に入れました。

そこで、施設とも相談し、
病院受診を打診しました。

結果として、
その腰痛は癌の骨転移によるものでした。

⑤違和感(ヒヤリ)

この時のヒヤリは、
圧迫骨折ではなかったことそのものではありません。

回復してきた人に新しく出た強い痛みを、
いつもの経過の延長で見てしまう可能性があったこと

の方でした。

施設に入ってから、
少しずつ動けるようになってきた。
歩ける距離も伸びてきた。

そういう流れがあると、
痛みも
「使う量が増えたからか」
「姿勢や筋力低下の影響か」
と考えやすくなります。

高齢者の腰痛では、
圧迫骨折もよくある話です。

だからこそ、
見慣れた原因の方に引っ張られやすい。

でも実際には、
その痛みは、
もっと別の重い背景を持っていました。

⑥減らせる判断

回復していた人の新しい強い痛みほど、別の原因を疑うこと

高齢者の現場では、
腰痛そのものは珍しくありません。

だからこそ、
「よくある痛み」に見えてしまうことがあります。

ただ、
それまでの経過と違う痛み、
新しく強く出てきた痛み、
動作開始時に鋭く出る痛み、
棘突起直上の圧痛など、

いつもの説明に収まりきらない要素があるなら、
施術で抱え込まず、
受診につなげる判断が必要です。

訪問では、
関係が長いほど、
「この人はこういう人」と見やすくなります。

でも、長く見ている人ほど、
新しい変化は別で考えた方が安全です。

⑦今ならどうするか

今なら、
回復してきた人に新しく強い痛みが出た時は、
まず
「元の病気や経過の延長で説明できるか」
ではなく、
「それ以外を疑う必要はないか」
から見ます。

特に、
・痛みの出方が急に変わった
・局所の圧痛がはっきりしている
・動作開始時の痛みが強い
・今までの施術反応と違う

こうした変化がある時は、
施設や家族と相談し、
早めに受診につなげます。

施術を続けるかどうかより先に、
まず受診につなぐ。

そこを優先した方が安全です。

まとめ

このケースで残す判断は1つです。

回復していた人の新しい痛みほど、いつもの経過で説明しない

長く関わっている人ほど、
変化を見慣れた流れの中に入れたくなります。

でも実際には、
新しい強い痛みが、
全く別の原因を示していることがあります。

訪問で大事なのは、
施術を続けることではなく、
施術で抱え込まないことです。


判断が揺れた時に、先に見る1枚

訪問では、
「腰が痛いから施術する」だけでは止まらない場面があります。

今回のように、
新しい痛みをいつもの経過で見てしまいそうになる時、
先に確認する判断の順番があります。

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延長・頻度・キャンセル・関係のズレを、
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