ホームホスピスから見た訪問鍼灸|施設の理念を理解してから入る

訪問鍼灸・訪問マッサージで、ホームホスピスに入ることがあります。

痛みがある。
身体がこわばっている。
人との関わりが減っている。
終末期を迎えている。
家族さんが、最後まで何かしてあげたいと考えている。

そうした場面で、訪問施術が意味を持つことはあります。

ただ、ホームホスピスを「高齢者が生活している小規模な施設」とだけ捉えて入ると、施設側とのズレが起きます。

ホームホスピスでは、身体の状態だけでなく、その人がどう暮らし、誰と関わり、最期までどのように過ごすかが大切にされています。

訪問施術者が施術だけを見ていると、施設側が守っている暮らしや関係性を乱してしまうことがあります。

施設側からも、外部職には「まずホームホスピスについて理解してほしい」という声がありました。

この記事では、ホームホスピスに入る訪問鍼灸師・訪問マッサージ師が、施術前に理解しておきたいことを整理します。

ホームホスピスそのものを詳しく解説する記事ではなく、外部施術者として施設の理念とズレないための記事です。

ホームホスピスは、施術をする場所ではなく暮らしの場

訪問施術者にとって、施設は仕事をする場所です。

決められた時間に訪問する。
身体の状態を確認する。
施術をする。
必要なことを報告して帰る。

ただ、そこで生活している本人さんにとっては、自分の暮らしの場です。

特にホームホスピスでは、医療や介護だけでなく、食事、会話、人との距離、家族との時間、その人らしい生活が重視されます。

施術者が「身体を良くすること」だけを優先すると、施設側が大切にしている暮らしとぶつかることがあります。

施術者が見やすいもの 施設側が見ているもの
痛みや関節の動き 本人さんがどう過ごせているか
施術の時間と回数 食事・休息・家族との時間との兼ね合い
機能の改善 今の状態で無理なく暮らせること
施術者としてできること 本人さんが望んでいる関わり

ホームホスピスに入る時は、施術する場所を借りるという感覚では足りません。

本人さんの暮らしの中に、外部職として入らせてもらう。

その前提を持つことが大切です。

最初に確認したいのは、施設が大切にしていること

施設には、それぞれの特徴があります。

同じ高齢者施設でも、認知症ケアを中心にしている施設、医療的な支援が多い施設、生活の継続を大切にしている施設では、外部職に求める関わり方も違います。

ホームホスピスに入る施術者は、いきなり施術内容を説明する前に、施設が何を大切にしているのか確認した方がよいです。

たとえば、次のようなことです。

確認したいこと 確認する理由
本人さんの現在の暮らし方 施術が日常の負担にならないようにする
本人さん・家族さんの希望 施術者側の目的だけで進めないため
施設が大切にしているケア 施設の方針と施術をぶつけないため
医療・介護との関係 他職種の関わりを邪魔しないため
施術者に期待する役割 何をすれば施設側の助けになるか分かる

施設の理念を詳しく暗記する必要はありません。

ただ、「ここはどんな場所で、何を大切にしているのか」を聞く姿勢は必要です。

施設側から見た訪問鍼灸の分かりにくさについては、こちらの記事で整理しています。

施設側から見た訪問鍼灸|「何をしているか分からないもの」は勧めにくい

施術者が施設の支援方針を動かそうとしない

訪問施術者は、本人さんの身体を近くで見ています。

そのため、施設の支援について気になることが出てくることがあります。

もっと身体を動かした方がいい。
この時間に起きた方がいい。
家族さんにはこう説明した方がいい。
この介助方法を変えた方がいい。

気づきを持つこと自体は悪くありません。

ただ、その気づきをもとに、施術者が施設の支援方針を直接動かそうとするとズレます。

施設側は、身体機能だけで方針を決めているわけではありません。

本人さんの希望。
家族さんの考え。
医療的な状態。
職員体制。
暮らしの流れ。
これまでの経過。

こうしたものを含めて支援しています。

ズレやすい関わり 施設と合わせやすい関わり
施設の介助方法を変えるよう指示する 施術中に見えた反応を共有する
家族さんへ先に方針を提案する 施設側にも相談してから伝える
施術者の判断で運動量を増やす 本人さんの負担と施設の考えを確認する

訪問施術者は、施設の支援を主導する立場ではありません。

専門職として気づいたことを伝え、施設側が判断できる材料を渡す立場です。

職員さんへの伝え方や施設内の情報の流れについては、こちらの記事で詳しく整理しています。

訪問施術者の声が大きい・説明を施設に丸投げする|認知症対応型施設で困られる関わり

施設が言いにくいことを支える関わりもある

ホームホスピス側からは、施設の考えを理解したうえで、家族さんや他職種との間に入ってくれる外部職が助かるという声もありました。

施設側には、本人さんや家族さんへ言いにくいことがあります。

ケアマネジャーさんや他職種に、施設の考えがうまく伝わらないこともあります。

その時に、施設の理念や本人さんの暮らしを理解している医療職が、

「施設ではこのような様子です」
「今はこういう関わりが負担になりにくいと思います」
「本人さんはこの時間を大切にされています」

と伝えてくれると、施設側が助かることがあります。

ただし、施術者が施設の代弁者になる必要はありません。

大切なのは、施設側の話を聞かずに、自分の考えだけを家族さんや他職種へ伝えないことです。

助かる関わり 注意したいこと
施設での本人さんの様子を家族へ伝える 施設側と内容を共有しておく
身体面から見た気づきを伝える 施設の方針を否定しない
他職種へ情報をつなぐ 施術者だけで話を決めない

施設を理解している外部職は、単に施術をするだけでなく、情報をつなぐ役割を持つことがあります。

ただし、その役割は施設との信頼関係があって初めて成立します。

施術の目的を施設の暮らしに合わせる

ホームホスピスでは、身体機能の改善だけが訪問施術の価値とは限りません。

少し楽に過ごせる。
不安が和らぐ。
いつもの人と話せる。
手や足に触れてもらえる。
家族さんが安心できる。

そうした時間にも意味があります。

一方で、施術者側が「改善させること」にこだわると、本人さんの今の暮らしとズレることがあります。

施術量を増やす。
運動を強く勧める。
できない動作を繰り返させる。
家族さんに改善を期待させる。

こうした関わりが必要な時期もありますが、終末期や状態変化が大きい時には、目的を見直す必要があります。

施術者側の目的 暮らしに合わせた見直し
機能を改善する 今の状態で楽に過ごせる時間を作る
運動量を増やす 本人さんの負担が少ない動きを探す
痛みをなくす 痛みや不安が少し和らぐ関わりをする
施術を予定通り行う その日の状態に合わせて短縮・中止する

終末期に訪問施術を続けるかどうかについては、こちらの記事で詳しく整理しています。

終末期の訪問鍼灸はやめるべきか|施設側が「最後まで来てほしい」と感じる場面

ホームホスピスに入る訪問施術者は、自分がしたい施術を持ち込むのではなく、その人の暮らしの中で何が必要かを考える必要があります。

まとめ

ホームホスピスに入る訪問鍼灸・訪問マッサージ施術者は、施術技術だけでなく、施設の理念を理解する必要があります。

ホームホスピスは、単に施術をする場所ではありません。

本人さんが暮らし、家族さんと関わり、最期までその人らしく過ごすための場です。

訪問施術者は、施設が何を大切にしているのかを確認する。

施設の支援方針を勝手に動かさない。

気づいたことは、指示ではなく共有にする。

改善だけでなく、安心や関わりも施術の目的として考える。

これだけでも、施設側とのズレは減らせます。

施設の種類だけで判断せず、その施設が何を大切にしているのかを知る。

それが、ホームホスピスに入る外部施術者の最初の準備です。

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