柔整療養費の令和8年度改定で何が変わるのか|初検料・2部位目逓減・自己施術の見直し
①この記事で避けられること(読む理由)
この記事では、令和8年度の柔道整復療養費改定について、
・金額だけを見て「少し上がった」で終わること
・初検料、再検料、2部位目逓減の意味を見落とすこと
・明細書発行、自己施術、自家施術まわりの整理を後回しにすること
・長期、多部位、頻回施術が制度側からどう見られているかを見落とすこと
・柔整だけの話として流してしまい、療養費制度全体の流れを読まないこと
を避けるための判断を置いています。
今回の改定は、単なる料金変更ではありません。
料金は少し上がります。
ただし同時に、初検料の扱い、2部位目の逓減、明細書の発行、自己施術・自家施術、長期・多部位患者への対応が、かなり整理されています。
柔整療養費の空気としては、
「必要な施術は残す。けれど、説明できない請求は残しにくくする」
方向に見えます。
細かい通知を全部読むのがしんどい方は、まずこの記事で大きな流れだけ掴んでもらえればと思います。
厚生労働省の資料では、令和8年度の柔整療養費改定は令和8年7月1日施行とされ、改定率はプラス0.60%、初検料・再検料・後療料・明細書発行加算などの見直しが示されています。
②誰向けか
この記事は、次のような方向けです。
・柔道整復師
・整骨院、接骨院を運営している人
・柔整療養費の令和8年度改定をざっくり把握したい人
・初検料、再検料、2部位目逓減の変更点を確認したい人
・多部位、長期施術、明細書発行まわりを見直したい人
・訪問鍼灸、訪問マッサージ側から、療養費制度の流れを見ておきたい人
この記事では、細かい点数をすべて追うというより、実務上どこを見直すべきかを中心に整理します。
③柔整療養費の令和8年度改定で何が変わるのか
令和8年度の柔道整復療養費改定について、正式な内容が出ました。
資料を見れば分かりますが、かなり量が多いです。
細かい金額まで全部追おうとすると、見る気がなくなります。
ただ、実務者目線で見るなら、今回の改定はそこまで複雑に考えなくてもいいと思います。
結論から言うと、今回の改定は、
料金は少し上がる。
でも、多部位・長期・初検料・明細書・自己施術まわりは、より見られるようになる。
こういう改定です。
単純な値上げというより、
「必要なものは少し上げるけど、取り方の曖昧さは減らしていく」
という方向に見えます。
④主な変更点
今回の大きな変更点を、かなりざっくり整理すると以下です。
| 項目 | 改定前 | 改定後 |
|---|---|---|
| 初検料 | 1,550円 | 1,560円 |
| 再検料 | 410円 | 420円 |
| 施療料・打撲捻挫初回 | 760円 | 770円 |
| 後療料・打撲捻挫 | 505円 | 550円 |
| 温罨法料 | 75円 | 80円 |
| 冷罨法料 | 85円 | 80円 |
| 電療料 | 33円 | 46円 |
| 明細書発行加算 | 月1回中心 | 1回ごとに10円算定可能 |
金額だけ見ると、そこまで大きな変化には見えません。
ただし、実務上の影響は金額よりも算定ルールの見直しにあります。
特に見ておくべきなのは、次の5つです。
1つ目は、初検料の取り方。
2つ目は、2部位目の逓減。
3つ目は、明細書発行の扱い。
4つ目は、自己施術・自家施術。
5つ目は、長期・多部位患者への対応です。
初検料は1,560円、再検料は420円、打撲・捻挫の後療料は550円、明細書発行加算は10円など、厚生労働省資料上でも各料金項目の見直しが示されています。
⑤初検料は取れる。ただし、かなり整理された
まず、初検料です。
今回の改定では、初検料は1,550円から1,560円に引き上げられています。
ただし、大事なのは金額よりも算定ルールです。
今回の改定では、初検料について、患者の特性などを初めて見極める行為を中心に評価するものとされています。
つまり、単に新しい部位が出たから何でも初検、という考え方ではなくなっていきます。
他部位での施術を含め、施術継続中である場合や、施術の終了・中止後3か月が経過していない場合には、初検料を算定できないとされています。
1か月以上3か月以内の場合は、初検料ではなく再検料を算定できる整理です。
ここはかなり重要です。
たとえば、膝で通っていた患者さんが、途中で肩も痛いと言った。
あるいは、いったん終わったように見えて、2か月後にまた別の部位で来た。
こういう場面で、どこまで初検として扱えるのか。
今回の改定は、そこをかなり絞りに来ています。
僕の感覚では、これは
「初検料を上げた改定」ではなく、「初検料の立て直しを整理した改定」
と見た方が分かりやすいです。
⑥再検料は少し上がり、連続2回まで算定可能に
再検料は410円から420円に上がります。
また、継続的な見立てを評価するという観点から、連続する2回の施術について算定できることになります。
これは、初検料を簡単に立て直せなくする代わりに、再検料側で一定の評価を入れた形にも見えます。
つまり、
初めて見る行為は初検料。
継続中や短期間での再開は再検料。
この線引きをはっきりさせたいのだと思います。
⑦2部位目の逓減は、現場から見るとかなり重い
今回、かなり大きいのがここです。
打撲・捻挫の後療料は、505円から550円に上がります。
一見すると、後療料は大きめに引き上げられています。
ただし同時に、2部位目の施術について80%の逓減が導入されます。
3部位目以降は60%です。
温罨法料、冷罨法料、電療料についても、2部位目の逓減対象になります。
これは、現場から見るとかなり厳しいと思います。
特に、ちゃんと複数部位を診ている施術所ほど、
「いや、2部位目から逓減はきつくないか」
と感じる部分はあるはずです。
ただ、保険者側や制度側の目線で見ると、狙いは分かります。
柔整療養費では、なぜか2部位以上の請求が多くなりやすい。
毎回のように複数部位が並ぶ。
負傷原因や経過が曖昧なまま、部位数で請求が膨らむ。
そう見られている部分があるのだと思います。
厚労省資料でも、今後の検討事項として、請求のほとんどが2部位以上である施術所の実態把握や、近接部位の算定方法の見直しが挙げられています。
つまり、2部位目逓減は今回だけの話ではなく、
今後さらに多部位請求が見られていく入口
と考えた方がいいです。
⑧「2部位目逓減はひどい」で終わらせない方がいい
現場感覚としては、2部位目逓減は厳しいです。
ここは雑に、
「多部位請求していた院が悪い」
で片づける話でもないと思います。
本当に2部位の負傷があるなら、2部位として扱う必要があります。
患者さんの状態によっては、複数部位を見ること自体は普通にあります。
問題は、
その2部位に、負傷原因・経過・施術の必要性・説明できる記録があるか
です。
これからは、2部位以上を算定するなら、
なぜ2部位なのか。
それぞれ別の負傷として説明できるのか。
近接部位ではないのか。
経過はどう変化しているのか。
いつまで続ける必要があるのか。
このあたりが、より重要になります。
制度の流れとしては、
「部位数で積む」より、「説明できる施術だけ残す」方向
に向かっているように見えます。
⑨明細書発行加算は、透明化の流れ
次に明細書です。
明細書発行体制加算は、名称が「明細書発行加算」に見直されます。
そして、明細書を無償で患者に交付した場合、1回あたり10円の加算が算定できる扱いになります。
ここだけ見ると、
「毎回10円つくなら良いのでは」
と思うかもしれません。
ただ、実務としては少し重くなります。
明細書は、患者から一部負担金などの支払いを受けるごとに交付することが原則です。
1か月単位でまとめて交付する場合も認められますが、その場合は患者の求めがあることを文書で明示的に確認する必要があります。
また、明細書には負傷名、または施術部位が分かる内容が必要になります。
これは単なる事務作業ではありません。
患者さんに対しても、保険者に対しても、
「何に対して、何を請求しているのか」
を見えるようにする流れです。
今までなんとなくブラックボックスになっていた部分を、少しずつ開いていく方向です。
⑩自己施術・自家施術は支給対象外と明確化
今回の改定で、自己施術・自家施術についても明確化されています。
自己施術・自家施術は、療養費の支給対象外であることが明確にされています。
普通の感覚では、
「自分で自分を施術して請求する人なんているのか」
「家族やスタッフに施術して保険請求する人なんているのか」
と思うかもしれません。
ただ、わざわざ制度上で明確化されるということは、問題視される事例があるということだと思います。
これは、新しく急に禁止されたというより、
もともと療養費の趣旨から外れるものを、逃げ道がないように整理した
と見る方が自然です。
療養費は、患者に必要な施術が行われた場合に支給されるものです。
自分自身、家族、関連施術所の関係者などに対する施術を、通常の患者と同じように療養費請求することは、制度の趣旨から見てもかなり無理があります。
ここは、まともにやっている施術所からすると当たり前の話かもしれません。
ただ、制度文書に入るということは、
そこまで明文化しないといけない現実がある
ということでもあります。
⑪長期・多部位患者も見られる
もう一つ見ておきたいのが、長期・多部位患者です。
今回、患者ごとの償還払いへの変更が認められる事例として、直近1年間で通算8か月以上かつ通算9部位以上の施術を受けている患者が追加されています。
あわせて、柔整審査委員会の重点審査項目に位置づけられます。
これはかなり分かりやすいです。
長く通っている。
部位数も多い。
負傷が入れ替わり続けている。
結果として、ずっと柔整療養費が発生している。
こういうケースを見に行くということです。
もちろん、本当に必要な施術はあります。
高齢者、スポーツ、生活背景、転倒、反復負荷など、長引く理由があるケースもあります。
ただ、療養費として扱う以上、
なぜ長期化しているのか。
なぜ部位が増えているのか。
どこで終了するのか。
どの時点で医療機関への相談が必要なのか。
ここを説明できないと、今後はかなり苦しくなると思います。
⑫今回の改定は「値上げ」より「透明化」
今回の改定を、単に料金改定として見ると、
「少し上がった」
「でも2部位目逓減は厳しい」
「明細書が面倒になった」
という話になります。
ただ、もう少し大きく見ると、方向性ははっきりしています。
柔整療養費を、より説明できる制度にしていく。
これだと思います。
初検料は、初めて見極める行為として整理する。
2部位以上は、必要性をより説明できるようにする。
明細書で、患者にも施術内容を見えるようにする。
自己施術・自家施術は支給対象外と明確にする。
長期・多部位は、重点的に見る。
つまり、
必要な施術は認める。
でも、曖昧な請求は見えるようにする。
こういう方向です。
⑬施術所が見直すべきこと
今回の改定を受けて、施術所側が見直すべきことは大きく5つあります。
1. 初検料と再検料の判断基準
施術継続中なのか。
終了後どれくらい経過しているのか。
本当に初検として扱えるのか。
ここを院内で整理しておいた方がいいです。
「別部位だから初検」ではなく、
患者単位で施術継続中かどうかを見る
という感覚が必要になります。
2. 2部位以上の記録
2部位以上を算定する場合は、負傷原因、経過、施術の必要性を記録しておく必要があります。
今後は、
「痛いと言っていたから」
「いつも通り2部位で」
「なんとなく関連しているから」
では説明が弱くなります。
3. 明細書の交付体制
明細書を都度交付するのか。
1か月まとめにするのか。
まとめる場合、患者の求めを文書で確認しているのか。
負傷名または施術部位が分かる内容になっているのか。
ここは事務的に整えておく必要があります。
4. 家族・スタッフ・関係者への施術
自己施術・自家施術は、療養費の支給対象外です。
家族、スタッフ、関係者への施術をどう扱うかは、かなり慎重に整理しておいた方がいいです。
「昔からそうしていた」
「みんなやっている」
「これくらい大丈夫」
は、もう通用しにくくなります。
5. 長期患者の終了ライン
長く通っている患者さんほど、目的と終了ラインが必要です。
痛みがあるから通う。
不安だから通う。
なんとなく続いている。
部位が変わりながら続いている。
こういうケースは、制度上も見られやすくなります。
必要な施術を続けることと、終了できないまま続けることは違います。
ここは、施術者側が判断ラインを持っておく必要があります。
まとめ
令和8年度の柔整療養費改定は、金額だけ見れば小幅な変更です。
ただ、実務上はかなり大きな意味があります。
特に重要なのは、
初検料の算定ルール。
2部位目の逓減。
明細書発行の推進。
自己施術・自家施術の明確化。
長期・多部位患者への対応。
この5つです。
今回の改定は、柔整療養費を単に減らすための改定というより、
必要なものは評価する。
でも、説明できないものは残しにくくする。
そういう改定だと思います。
現場から見ると、厳しい部分もあります。
特に2部位目逓減は、ちゃんと複数部位を診ている施術所にとっても影響があります。
ただ、これから大事なのは、
「制度が厳しくなった」
で終わることではありません。
自分たちの施術が、患者にも保険者にも説明できる形になっているか。
そこを見直すタイミングだと思います。
訪問施術の制度整理で迷っている方へ
柔整療養費も、訪問鍼灸・訪問マッサージの療養費も、細かい制度だけを追うとかなり複雑です。
ただ、実務で大事なのは、
・何に対して算定しているのか
・患者さんに説明できるか
・保険者に説明できる記録があるか
・長期化、多部位化した時に判断ラインがあるか
・制度の変更に耐えられる運用になっているか
だと思います。
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次の一手
柔整療養費の改定を見ると、制度側は明らかに
「説明できる請求」
を重視する方向に進んでいます。
これは柔整だけの話ではありません。
訪問鍼灸・訪問マッサージでも、同意書、報告書、施術内容、頻度、長期化、施設連携など、説明できる運用がより重要になっていくと思います。
制度を細かく覚えるだけでなく、自分の現場が説明できる形になっているか。
そこを見直す記事として、あわせて読んでみてください。
施術・相談について知りたい方へ
実際の施術について知りたい方は、かくたに針灸整骨院のページをご確認ください。
