施設サミットで見えた訪問鍼灸の課題|怪しさ・報告不足・認知症理解

施設管理者、看護師、介護職などが集まる施設サミットで、訪問鍼灸・訪問マッサージについて話す機会がありました。

参加者は10人前後。

認知症対応型のグループホーム。
サービス付き高齢者向け住宅。
ホームホスピス。
地域の医療・介護連携に関わる看護師。

施設の種類や立場は違いましたが、訪問施術に対して共通して出てきた声がありました。

「何をしているのか分からない」
「何ができるのか分からない」
「報告がないと、施設として判断できない」
「認知症のある方への関わり方を理解してほしい」

訪問鍼灸そのものを否定する意見ばかりではありません。

むしろ、転倒後の情報共有、本人さんとの会話、家族さんへの報告、終末期の関わりなど、助かっているという話も出ました。

ただし、その価値が施設側から見える施術者と、何をしているか分からないまま出入りする施術者に分かれているようでした。

この記事では、施設サミットで実際に出た声をもとに、施設側から見た訪問鍼灸・訪問マッサージの課題を整理します。

個別の対処法をすべて解説するのではなく、施設側がどこで不安を感じているのかを確認する記事です。

最初に出たのは「何をしているか分からない」という声

施設側から繰り返し出たのは、訪問鍼灸・訪問マッサージが分かりにくいという声でした。

何を目的に来ているのか。
施術で何をしているのか。
どこまで対応できるのか。
施術後に何を確認すればよいのか。

施設側がこれらを理解できていないと、利用者さんや家族さんから相談されても勧めにくくなります。

施設側から見えないこと 施設側が判断しにくくなること
施術の目的 本人さんに必要なサービスか
施術後の状態 その後の介助や見守りで注意が必要か
できること・できないこと どこまで施術者へ相談してよいか
報告先や連絡先 気になることがあった時に誰へ伝えるか

施術者側は、本人さんや家族さんへ説明しているため、訪問施術の目的は伝わっていると思いやすいです。

しかし、施設職員さん全員が、契約時の説明を聞いているわけではありません。

施設側から見た訪問鍼灸の分かりにくさについては、こちらの記事で詳しく整理しています。

施設側から見た訪問鍼灸|「何をしているか分からないもの」は勧めにくい

訪問鍼灸が怪しく見えるのは、施術内容だけが原因ではない

施設サミットでは、訪問鍼灸に対して「怪しく見えることがある」という強い意見も出ました。

ただ、話を聞いていくと、鍼灸という施術方法だけが原因ではありませんでした。

何をしているか説明がない。
施術後の報告がない。
家族さんと何を話しているか分からない。
急に施術回数や方針が変わる。
職員さんへ指示だけを残して帰る。

こうした見えにくさが積み重なることで、訪問施術全体が怪しく見えやすくなります。

怪しく見えやすい状態 施設が安心しやすい状態
効果だけを強く説明する 目的と限界を分けて説明する
本人さんの居室だけで完結する 施術後に施設側へ短く共有する
家族さんと施設外で話を進める 生活や介助に関わる内容は施設にも返す
専門職として指示する 気づきを判断材料として共有する

訪問鍼灸が分かりにくく見える時、必要なのは施術効果をさらに強く説明することではありません。

自分が何を見る人で、何を施設側へ返し、何を勝手に決めないのかを伝えることです。

施設に入る時の短い自己紹介については、こちらの記事で整理しています。

訪問鍼灸師が施設に入る時の自己紹介|何を見る人か・何を勝手に決めないか

報告がなければ、施設は勧めることも評価することもできない

施設側から見ると、訪問施術者が定期的に来ていても、報告がなければ施術の内容や経過を把握できません。

本人さんが施術内容を説明できない。
認知機能が低下している。
家族さんから施設へ問い合わせがある。
施術後に疲労や痛みが出ることがある。

こうした状況で、施術者から何も返ってこなければ、施設職員さんは答えられません。

サミットでは、毎回長い報告書がほしいという話ではなく、施設側が確認できる目安が必要だという意見が出ました。

共有の場面 施設側が知りたいこと
毎回の施術後 普段通り終わったか、疲れや注意点があるか
状態変化があった時 何が普段と違い、誰へつなぐ必要があるか
一定期間ごと 何を目的に継続し、どのような経過か
家族さんから要望が出た時 施設の支援に影響する話が出ていないか

施設への報告は、施術者の仕事を評価してもらうためだけのものではありません。

その後の生活や介助を安全に続けるための情報共有です。

施設での報告先や頻度を決める考え方については、こちらの記事で整理しています。

施設に入る訪問施術者に必要な報告ルール|施設側が目安を作る意味

医師への施術報告書と施設への共有の違いについてはこちらです。

訪問鍼灸に報告義務はあるのか|医師への施術報告書と施設共有の違い

認知症施設では、技術より先に関わり方を見られる

認知症対応型施設からは、外部施術者の関わり方に関する具体的な話も出ました。

声が大きい。
本人さんへ説明すべきことを施設職員さんへ任せる。
職員さんへ介助や運動の指示を残して帰る。
本人さんが話していることを理解しようとしない。

施術者側では、分かりやすく説明し、専門職として助言しているつもりかもしれません。

しかし、認知症のある方が生活する施設では、本人さんの反応や、施設全体の空気を見る必要があります。

施術者が注意したいこと 施設側が見ていること
本人さんが拒否していない 嫌と言葉にできず我慢していないか
聞こえるように大きく話す 本人さんや他の利用者さんが不安になっていないか
介助方法を専門的に助言する 現場の方針や職員体制を無視していないか
予定通り施術を行う その日の本人さんの状態に合っているか

認知症への理解は、診断名や症状を知っていることだけではありません。

本人さんが拒否を言語化できない可能性を考える。
その日の反応を見て止まる。
施設職員さんの見立ても確認する。

こうした関わりができるかどうかです。

拒否を言葉にできない方への配慮については、こちらの記事で詳しく整理しています。

認知症施設に入る訪問鍼灸師が知っておきたいこと|拒否を言語化できない人への配慮

認知症対応型施設で困られやすい外部職の関わりについてはこちらです。

訪問施術者の声が大きい・説明を施設に丸投げする|認知症対応型施設で困られる関わり

施設側は訪問施術者を排除したいわけではない

施設サミットで出た声は、訪問鍼灸・訪問マッサージを施設から排除したいというものではありませんでした。

むしろ、助かっている関わりも多く挙げられました。

転倒後に身体の状態を専門職として共有してくれる。
施術以外の生活の様子を家族さんへ伝えてくれる。
新しい物を買わず、施設にある環境で動作を見てくれる。
利用者さんや周囲の方と自然に関係を作ってくれる。

終末期についても、医療や介護の邪魔になるならやめてほしいという話だけではありませんでした。

人との関わりが減っていく時期だからこそ、本人さんが望むなら最後まで来てほしいという声もありました。

受け入れにくい外部職 施設側が助かる外部職
施術だけして無言で帰る 本人さんの反応を短く返す
職員さんへ指示する 専門職として見えたことを共有する
施設の特徴を見ずに入る 施設が大切にしていることを確認する
チームの外で話を進める 家族・施設・他職種へ必要な情報をつなぐ

施設側が求めているのは、施設の言う通りに動く施術者ではありません。

自分の専門性を持ちながら、生活の場や他職種の役割を理解して関われる施術者です。

終末期に施設側が訪問施術者へ期待する関わりについては、こちらの記事で整理しています。

終末期の訪問鍼灸はやめるべきか|施設側が「最後まで来てほしい」と感じる場面

地域連携やカンファレンスに呼ばれる外部職になるための考え方はこちらです。

訪問鍼灸は地域連携に入れているのか|カンファに呼ばれない外部職から抜け出すには

まとめ

施設サミットでは、訪問鍼灸・訪問マッサージに対する率直な声が出ました。

何をしているのか分からない。
報告がない。
怪しく見えることがある。
認知症のある方への理解が見えない。

施術者側には厳しく聞こえる内容もあります。

ただ、施設側が訪問施術そのものを否定しているわけではありません。

分からないままでは、施設として利用者さんや家族さんへ勧められない。

報告がなければ、その後の生活や介助でどう扱えばよいか判断できない。

認知症や施設の特徴を理解していなければ、安心して生活の場へ入れられない。

そういう話です。

施設側から見た訪問鍼灸の課題は、施術技術だけではありません。

何をしているか見えること。
必要な情報を返すこと。
認知症や生活の場を理解すること。
家族や他職種と勝手に話を進めないこと。

こうした部分が整うことで、訪問施術者は「外部から施術に来る人」から、「一緒に利用者さんを見られる人」へ変わっていきます。

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