訪問鍼灸は一人でも事業を最適化できる|売上拡大だけではない経営の考え方
開業して売上が増えてくると、次の展開としてスタッフの採用や事業拡大を考えることがあります。
自分以外の施術者を増やす。
店舗を増やす。
自分は現場から離れて、経営に専念する。
事業を成長させる方法として、どれも自然な選択です。
ただ、長く一人で訪問施術を続けてきて、最近は別のことも考えるようになりました。
施術者の事業は、必ずしも規模を大きくする方向だけで考える必要はないのではないか。
一人のままでも、訪問ルートを整える。
固定費を抑える。
事務作業を短くする。
対応する件数やエリアを決める。
こうした改善によって、利益や自由に使える時間を増やすことはできます。
反対に、人を雇って売上が増えても、人件費や管理業務まで増えれば、自分が望んでいた経営になるとは限りません。
今回は、訪問鍼灸における「一人で最適化する」という事業の考え方を整理します。
目次
事業を大きくすることと、良くすることは別
事業の成長というと、売上、スタッフ数、店舗数などが分かりやすい指標になります。
もちろん、それらを増やすこと自体が悪いわけではありません。
人を増やせば、自分一人では受けられなかった依頼にも対応できます。
自分の施術時間を減らし、別の仕事へ時間を使える可能性もあります。
一方で、人を雇えば人件費だけでなく、採用、教育、労務管理、引き継ぎなどの仕事も増えます。
店舗を持てば、家賃や設備費などの固定費も増えます。
だから見るべきなのは、売上だけではありません。
- 利益は増えたか
- 自由に使える時間は増えたか
- 固定費はどれくらい増えたか
- 自分が持つ責任はどう変わったか
規模を拡大した結果、何が増えて、何が減ったのか。
そこまで含めて事業の変化だと思います。
一人経営にも改善できる余地はある
一人で施術している以上、対応件数には上限があります。
これは変えられません。
ただし、一人だから改善できないわけではありません。
例えば、
- 訪問エリアを整理する
- 予約の並びを見直す
- 既存ルートに近い依頼を優先する
- キャンセルや変更のルールを決める
- 記録・報告・請求の重複作業を減らす
- 必要のない固定費を持たない
こうした改善なら、施術者を増やさなくてもできます。
同じ売上でも、移動や事務に使う時間が減れば、事業の中身は変わります。
同じ件数でも、身体的な負担が減れば、長く続けやすくなります。
一人経営は、規模を増やすのではなく、今ある仕事の密度を整えるという成長のさせ方があります。
訪問鍼灸を大きな固定費を持たず小さく始める考え方については、こちらでも整理しています。
訪問施術では一件の売上より、その後の動線を見る
訪問施術で特に影響が大きいのが、移動です。
新しい依頼が一件入った。
施術時間だけを見れば、まだ対応できる。
しかし、既存ルートから大きく外れていれば、その一件のために移動時間が増えます。
その結果、前後の予約も組みにくくなる。
休憩がなくなる。
一日の終了時間が遅くなる。
同じ「一件増えた」でも、既存ルート内の一件とは負担が違います。
だから私は、訪問施術では、
その一件の売上ではなく、その一件を入れた後の一日を見る。
という考え方が大事だと思っています。
遠方だから断る、という単純な話ではありません。
ただ、依頼が来るたびに受けていると、患者数より先に移動と時間が限界になります。
件数や疲労の上限については、こちらの記事でも整理しています。
▶ 在宅ケアが続けられなくなる前に|働き方の上限と線引きの決め方
固定費を増やさないことも経営判断になる
私自身、開業後は固定費を大きく増やさないことを意識してきました。
必要なものにはお金を使います。
ただ、売上が増えたからという理由だけで、人や設備を増やす必要はないと考えています。
固定費が増えると、その支払いを維持するために必要な売上も増えます。
つまり、仕事を減らしたくても減らしにくくなります。
反対に固定費が小さければ、
- 働く日数を調整する
- 一日の訪問数を減らす
- 新しい仕事へ時間を使う
- 家庭の事情に合わせて働き方を変える
といった選択肢を残しやすくなります。
固定費を小さくすることは、単なる節約ではなく、将来の選択肢を残すことでもあります。
売上だけでなく、使った時間まで見る
一日の売上だけを見ると、仕事は増やした方が良く見えます。
ただし、その売上を作るために何時間使ったのかまで見ると、印象が変わることがあります。
訪問施術には、施術以外にも、
- 移動
- 予約調整
- 施術記録
- 保険請求
- 医師・ケアマネへの報告
- 家族との連絡
があります。
これらもすべて事業に使っている時間です。
そのため、単純に件数を増やすより、移動や事務作業を短くする方が効果的なこともあります。
ただし、効率化のために必要な記録や連携を削るのは違います。
減らすのは必要な仕事ではなく、重複や無駄な手間です。
身体的な負担も含めて続け方を考える場合はこちらです。
▶ 訪問鍼灸を続けるための身体管理|疲労で判断を誤らないために
一人経営と組織経営では、増える責任が違う
人を増やすと、自分が施術しなくても売上を作れる可能性があります。
これは組織化の大きな利点です。
ただし、自分以外の人が施術する以上、別の仕事も必要になります。
- 施術や対応の基準をどうそろえるか
- 記録・報告をどう統一するか
- トラブル時に誰が対応するか
- 退職時に患者さんをどう引き継ぐか
- 家族・ケアマネ・施設との情報をどう共有するか
一人経営では、基本的に自分の判断と行動に責任を持ちます。
組織経営では、自分以外の人が行った仕事についても仕組みを作る必要があります。
人を増やせば、自分の責任がそのまま減るわけではありません。
現場の仕事を減らす代わりに、管理する仕事が増えることがあります。
一人経営の弱点は、全部一人で抱えることではない
もちろん、一人経営にも弱点があります。
一番大きいのは、自分が動けなくなると事業への影響が大きいことです。
病気やけが。
長期休暇。
施術件数の上限。
これらは一人経営では避けにくい問題です。
ただ、その対策が必ずスタッフ採用になるとは限りません。
- 事務作業を外注する
- 記録や報告を仕組み化する
- 予約の組み方を整理する
- 訪問エリアを見直す
- 必要に応じて他事業所との連携を作る
という方法もあります。
一人で事業をすることと、すべてを一人で抱えることは同じではありません。
自分がする必要のある仕事と、外へ出せる仕事を分けることも最適化の一つです。
何を最大化したいのか
結局、一人経営と組織経営のどちらが正しい、という話ではありません。
先に決めたいのは、何を増やしたいのかです。
- 売上
- 利益
- 対応できる患者数
- 自由に使える時間
- 休み
- 施術以外の仕事へ使える時間
目的によって、選ぶ事業構造は変わります。
売上を最大化したいなら、人を増やすことが必要になるかもしれません。
自分の施術時間を減らしたいなら、組織化や外注が有効なこともあります。
一方で、利益や時間、経営の自由度を重視するなら、一人のまま整える方が合う場合もあります。
私自身、最初から綿密な事業計画を作って現在の形を目指したわけではありません。
訪問エリアを考える。
固定費を増やしすぎない。
対応できる範囲を把握する。
記録や報告を整える。
目の前の仕事を続けながら、無理の少ない方法へ少しずつ変えてきました。
振り返ると、それも一つの事業設計だったのだと思います。
まとめ
訪問鍼灸で事業を成長させる方法は、スタッフや店舗を増やすことだけではありません。
一人のままでも、
- 訪問ルートを整える
- 固定費を管理する
- 事務作業を効率化する
- 仕事を受ける範囲を決める
- 必要な部分だけ外部の力を使う
ことで、事業を改善できます。
もちろん、一人経営には上限があります。
組織化した方が目的に合う人もいます。
ただ、一人で続けることを「拡大できなかった結果」と考える必要はありません。
売上を増やすことと、事業を良くすることは同じではありません。
そして、事業規模が大きいことと、自分にとって良い経営であることも同じではありません。
一人のまま改善できることはないか。
今の売上を作るために、必要以上の時間や固定費を使っていないか。
増やそうとしている仕事は、自分が望む働き方につながっているか。
訪問鍼灸の事業を考える時は、
「どう大きくするか」だけでなく、「どう整えるか」
も選択肢に入れていいと思います。
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