整骨院雇われ院長のヒヤリハット|回内外検査を飛ばしかけた判断
これは、
**駆け出しの頃(約15年前)**の話です。
今なら絶対にしない判断ですが、
当時の自分の思考と条件を、そのまま書きます。
事例の概要
- 30歳男性
- 自転車で転倒
- 右肘周囲の痛みを主訴
- 受傷当日〜翌日レベル
来院時の所見は、こうでした。
- 肘の屈曲・伸展:疼痛なし
- 局所圧痛あり(強烈ではない)
- 腫脹・変形なし
- 本人は無口
- 転倒状況も「大したことない」との説明
全体として、
重症感は乏しい印象でした。
その場で働いていた「判断バイアス」
今振り返ると、
この時の判断には、複数の条件が重なっていました。
- 若い
- 男性
- 痛みを強く訴えない
- 動かせている
- 自分自身が「大丈夫であってほしい」と思っていた
そして、
一番よくなかったのがこれです。
「きっと大丈夫ですよ」
と、口に出してしまったこと。
この時点で、
自分の中では
「大丈夫なケース」として処理が始まっていました。
飛ばしかけていた検査
肘周囲の外傷で、
本来必ず確認すべきだったのは、
- 前腕の回内・回外動作
しかし当時は、
- 屈曲できる
- 伸展できる
- 表情も落ち着いている
という情報に引っ張られ、
検査を省略しかけていました。
それでも引っかかった「違和感」
幸いだったのは、
施術後に残った小さな違和感です。
- 痛みの説明が曖昧
- 本人が我慢強すぎる
- 「大丈夫」という言葉を、
自分が先に言ってしまった
そこで判断を修正し、
- 整形外科への紹介状を作成
- 受診を強く勧めました
後日わかった事実
整形外科での診断は、
- 右上腕骨外側上顆骨折
診察内容はこうでした。
- 肘の屈曲・伸展:疼痛(−)
- 前腕の回内・回外:疼痛(+)
つまり、
飛ばしかけた検査で、骨折がはっきり出ていた
ということです。
何が一番ヒヤッとしたのか
このケースで冷えたのは、
- 知識不足
- 技術不足
ではありません。
「自分が安心したい判断」を、
無意識に先に置いていたことです。
- 若いから大丈夫
- 動くから大丈夫
- 痛がらないから大丈夫
これらは、
医学的判断ではなく、希望的観測でした。
技術ミスではなく「順番ミス」
結果的に、
- 受診につなげた
- 骨折は見逃さなかった
それでも、この判断は
結果オーライなだけです。
問題は、
「確認すべきことより、
安心したい気持ちが先に来ていた」
という順番。
このヒヤリから残したルール
この経験以降、
外傷初期では必ず、
- 「動くかどうか」で判断しない
- 年齢・性別で軽くしない
- 関節外傷は“最後まで検査する”
という自分ルールを固定しました。
技術を増やしたのではなく、
検査を省略しない設計を入れただけです。
まとめ|一番危ないのは「大丈夫であってほしい」
- 技術は足りていた
- 知識もあった
- でも判断の順番が逆だった
現場で一番危ないのは、
「きっと大丈夫」という言葉が、
検査より先に出ること
技術じゃないヒヤリは、
こういうところから起きます。
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