整形外科リハのヒヤリハット|線を引かなかった指導
この記事は、
**医療現場で「親切のつもりで線を引かなかった結果、
現場と自分の立場が一気に危うくなった話」**です。
避けられるのは、
・時間の破壊
・役割の逸脱
・「断れない人」になること
です。
現場の事実
約15年前、整形外科で勤務していた頃の話。
・松葉杖指導の患者
・夫婦で来院
・通常、指導は10〜15分
・このケースでは30〜40分かかった
質問が多く、
「もう少し教えて」
「これはどうなる」
「前はここも教えてくれた」
というやり取りが続いた。
説明を重ねても、終わらない。
その場で起きていたこと
今振り返ると、
説明しても不安が減らない状態は、最初から始まっていた。
夫婦2人とも、
最初から「教えてもらう」「頼る」前提で来ていた。
こちらが説明する内容そのものより、
「誰かが引き受けてくれるか」を見ている
そんな感覚があった。
やり取りが進むにつれ、
話題は少しずつ、
松葉杖の使い方という範囲を外れていく。
・不安の確認
・同じ内容の繰り返し
・理解の問題というより、安心の要求
さらに、
「薬局に行けない」
「送迎の車に間に合わない」
という医療行為の外側の話が出てきた。
なぜ線を引けなかったか
当時の自分には、
線を引けなかった理由がいくつかあった。
・自宅で松葉杖を使うことへの不安
・指導が入りにくいと感じたこと
・理解が追いついていないように見えたこと
・自宅で転倒事故が起きたら嫌だという恐れ
これらが重なり、
「ここで切ったら危ないかもしれない」
という判断を、自分の中で強めていた。
結果として、
本来引くべき線を、
安全配慮という理由で後回しにした。
その結果
・他の患者を長時間待たせた
・業務全体が大きく遅れた
・上司から強く叱責された
・当の患者から感謝はなかった
上司はこう言った。
「自分でできることも、
やってくれる人がいたら全部頼る人や」
ヒヤッとした本当の理由
危なかったのは、
指導が長引いたことではない。
最初に、条件と役割を明確にしなかった判断。
今なら、
・開始前に「できる範囲」と「時間」を明示する
・そこを越えた要求には関与しない
そう決めておく。
また、
・感情の話が増える
・整形外科的な話題が消える
この時点で、
指導は成立していないと判断し、
打ち切る。
まとめ
この場面での失敗は、
教え方でも、技術でもない。
「親切」と「役割逸脱」を、
同じものとして扱ってしまった判断。
次に同じ場面が来たら、
説明を足すのではなく、
不安を引き受けるのでもなく、
線を引く判断を、
最初に置く。
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