鍼灸整骨院・接骨院のヒヤリハット|「鍼が好き」の定義がズレていた

この記事は、
「鍼が好き」と言われた新患対応で、
技術ではなく“前提のズレ”によって、
結果は出たのに次につながらなかった話
です。

避けられるのは、
・施術後の違和感
・納得感の欠如
・「効いたのに来ない」判断ミス
です。


現場の事実

・鍼灸整骨院で業務委託中
・新患、40代女性
・問診票に「鍼が好き」と記載
・主訴は首の痛み
・口数は少なく、反応は控えめ

問診を行い、
運動学・解剖学的な評価を踏まえて施術を組み立てた。

本人が「鍼が好き」とのことだったため、
刺激はやや強め。
響きも少し出した。


施術中・施術後に起きていたこと

・刺激後のだるさが出た
・わずかに内出血も出た

術後、
可動域は改善。
自覚症状も軽減。

他覚所見・自覚症状ともに、
施術としての反応は出ていた。

ただ、
表情には納得感が少なく、
返答も短かった。

次回来院はなかった。


ヒヤッとした本当の理由

危なかったのは、
刺激量でも、
内出血でも、
技術の選択でもない。

「鍼が好き」という言葉を、
刺激強度の許可として処理した判断。

後から振り返ると、
本人がこれまで受けてきたのは、
東洋医学的な説明や文脈を含めた
**“体験としての鍼”**だった可能性が高い。

一方で、
自分は鍼を
「評価と反応を見るための手段」
として扱っていた。

同じ「鍼」でも、
前提としている文脈が違っていた。


何がズレていたか

・「鍼が好き」=強刺激OK
・「鍼が好き」=響き歓迎

そう決めたのは、
相手ではなく、
こちらの解釈だった。

刺激に対する好みではなく、
どんな説明を受け、
どんな体験として鍼を受けてきたか

そこを確認しないまま、
施術に入っていた。


判断としての失敗

施術の反応を重視するあまり、
体験の前提確認を省いていた。

結果が出ていれば、
納得もついてくるだろう、
という判断。

しかし、
反応と納得は別。

このズレは、
技術では埋まらない。


まとめ

この場面で減らすべきだった判断は、
「もう少し効かせるかどうか」ではない。

「◯◯が好き」と言われた時、
その定義を確認せずに進める判断。

次に同じ場面が来たら、
刺激量を決める前に、

・どんな鍼を受けてきたか
・どんな説明があったか
・どんな反応が嫌か
・どうなっていたら納得なのか

体験の前提をそろえる。

それだけで、
「効いたのに来ない」は減らせる。


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