訪問鍼灸の始め方|店舗なしで開業する7つの準備

訪問鍼灸は、店舗を持たずに開業する方法があります。ただ、道具をそろえるだけでは、最初の患者さんを迎える準備は終わりません。

訪問できる範囲と時間を決め、費用を見積もり、届出・保険の手続き、記録、初回説明までを一つにつなげる。これが、小さく始めるときにも必要な準備です。

この記事では、独立を考えている鍼灸師に向けて、店舗なしで訪問鍼灸を始める順番を整理します。手続きの詳しい解説は関連記事に分け、ここでは「何を決めれば、一人目の患者さんを受けられるのか」を扱います。

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私は開業して最初の3年間、訪問だけで仕事をしていた

私自身、開業して最初の3年間は店舗を持たず、訪問だけで仕事をしていました。立ち上げ時の初期費用は10万円以下でした。

ただし、この金額をそのまま誰にでも当てはまる予算にはできません。すでに持っている施術用具、移動手段、記録・請求の方法などで、必要な費用は変わります。

この経験から伝えたいのは、店舗の家賃や大きな設備投資を抱える前に、訪問から始める選択肢もあるということです。そのうえで、施術以外の準備まで整えておく必要があります。

1.訪問する曜日・時間・範囲を決める

まず、何曜日の何時から何時まで働くのか、どこまで訪問するのかを書き出します。勤務と並行して始める場合は、勤務先の規程や契約も確認します。

  • 訪問できる曜日と時間帯
  • 移動手段と無理なく回れる地域
  • 施術に加え、移動・記録・連絡に使う時間
  • 日程変更や急な連絡に対応できる範囲

施術時間だけで予定を埋めると、次の訪問への移動や記録が後ろに押されます。最初は、移動も含めて守れる約束にしておく方が、その後の調整がしやすくなります。

2.開業時の費用と、毎月続く支出を分ける

「全部でいくらあれば始められるか」を考える前に、すでに持っているものと、買い足すものを分けます。さらに、一度だけの支出と、患者さんがいなくても続く支出を分けてください。

費用の分け方 書き出すものの例
開業時に用意するもの 不足する施術用具、持ち運ぶ道具、記録・請求環境、案内物
毎月続く支出 通信、記録・請求サービス、保険、契約しているサービスの利用料
訪問に伴って増える支出 鍼灸の消耗品、交通費、駐車場代など

必要なものは、選ぶ働き方で変わります。最初からすべての機器を購入するより、自分が提供する施術に必要なものから準備します。

また、売上が立つ時期と入金される時期は同じとは限りません。特に保険請求を扱う場合は、入金までの生活費と事業費も含めて考えておきます。

3.届出と受領委任の手続きを確認する

店舗を持たない場合でも、公的な手続きの確認は必要です。相談する窓口を分けると整理できます。

  • 住所地を管轄する保健所等:はり・きゅうの出張専門で始める場合の届出
  • 地方厚生局等:療養費の受領委任を取り扱う場合の申出と施術管理者の要件
  • 税務関係の窓口:事業形態に応じた届出と会計の準備

たとえば大阪市では、出張のみで施術する場合は、施術者の住所地の各区保健福祉センターが届出窓口です。所在地によって必要書類や窓口を確認してください。ここで扱うのは、はり・きゅうの出張施術であり、柔道整復の制度とは分けて考えます。

受領委任では、実務経験・研修などの要件も確認します。「申出を出したら、その日からすべての請求ができる」と見込まず、取扱い開始日まで確認しておきます。

窓口ごとの整理は、訪問鍼灸を始めるときの届出・受領委任・開業届の流れにまとめています。

4.保険で扱う範囲と、患者さんへの説明を決める

医療保険で施術する場合は、医師の同意をはじめ、支給対象となる状態や訪問施術の要件を確認します。医師の同意書があれば、どのような訪問でも保険対象になるわけではありません。

初回の説明では、少なくとも次の点を患者さん・家族と共有できるようにしておきます。

  • どのような施術を行うのか
  • 保険適用の条件と、必要な同意書等の書類
  • 自己負担額の確認方法と支払い方法
  • 頻度や訪問時間をどう相談するか
  • 日程変更やキャンセルの連絡先

初回説明の言い方を整えたい場合は、訪問鍼灸の初回説明テンプレートも使ってください。

5.施術用具と、記録・請求の流れをそろえる

鍼灸用具だけでなく、衛生用品、使用後の物品の管理、持ち運び、患者情報を安全に保管する方法まで準備します。機器の種類や量は、自分が提供する施術に合わせて決めます。

記録については、次の流れを一度通してみると、不足が見つかります。

  1. 依頼を受け、必要な患者情報を確認する
  2. 同意書等の書類と、施術の前提を確認する
  3. 施術録と日々の施術記録を残す
  4. 費用を説明し、支払い・請求を処理する
  5. 次回の確認事項と同意期間を管理する

紙でもデジタルでも、必要な情報を後から確認できることが大切です。書類ごとの役割は、訪問鍼灸のレセプト・カルテ・同意書の基本で整理しています。

6.依頼を受ける窓口と、案内する内容を決める

営業先を増やす前に、紹介する人が迷わず説明できる情報をそろえます。

  • 誰が、どの地域へ訪問するのか
  • どのような相談を受けられるのか
  • 依頼するときに、どこへ何を伝えればよいのか
  • 依頼を受けた後、どのように日程や適否を確認するのか

知人や関係先へ案内する場合も、訪問可能な範囲と連絡先を具体的に伝えます。治療効果を約束したり、説明できない範囲まで引き受けたりする必要はありません。

施術を紹介してもらったときは、本人の意向や情報共有の範囲を確認し、必要な関係者と連絡を取れる形にしておきます。

7.最初の訪問を、次回の連絡まで含めて準備する

初回は施術内容に目が向きますが、訪問を続けるには、場所・時間・連絡先の確認も欠かせません。

確認すること 具体例
場所 入室方法、施術する場所、物品を置ける場所
時間 訪問日時、他のサービスや生活予定との重なり
連絡先 日程変更の窓口、体調変化があったときに共有する相手
次の対応 次回日時、費用の扱い、確認が必要なことと連絡する担当

最初から訪問件数を増やすことだけを目標にせず、一人の患者さんについて、施術・記録・説明・請求・連絡が無理なく回るかを確認します。その流れを見てから、受けられる件数を考えます。

最初にやることは、7つの準備の「未確認」を見つけること

まず紙やメモに、訪問できる時間と地域、必要な費用、手続き、保険の扱い、記録、依頼窓口、初回対応を書き出してください。すべてをその日に完成させる必要はありません。

未確認の項目が分かれば、次にどの窓口へ確認し、何を準備するかが決まります。店舗を持つかどうかを考える段階から、一人目を迎えられる段階へ進めていきます。

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手続きの確認先

制度資料確認:2026年10月28日。具体的な届出・保険請求は、管轄窓口と加入保険者の最新の案内に沿って確認してください。