介護職と訪問施術者の距離感|手伝ってもらいすぎない・任せすぎない

施設に訪問鍼灸・訪問マッサージで入ると、介護職さんにお願いする場面があります。

利用者さんを居室へ案内してもらう。
車椅子からベッドへの移乗を手伝ってもらう。
本人さんの最近の様子を聞く。
施術後の状態を伝える。

施設で施術する以上、介護職さんとの関わりは避けられません。

ただ、ここで距離感を間違えることがあります。

毎回準備をしてもらう。
施術のために移乗してもらう。
職員さんに運動をお願いする。
反対に、何も聞かず、何も伝えず、一人で施術して帰る。

どちらに寄りすぎても、現場とはズレます。

訪問施術者は、介護職さんに全部手伝ってもらう人でも、施設と関係なく一人で完結する人でもありません。

この記事では、介護職さんと訪問施術者の間で、どこを頼り、どこを自分で持つのかを整理します。

介護職は施術者の助手ではない

施設へ訪問すると、職員さんが利用者さんのことをよく知っています。

移乗もできる。
本人さんへの声かけも慣れている。
施術場所の準備もできる。

そのため、施術者側はつい頼りたくなります。

ただ、介護職さんは訪問施術のために配置されているわけではありません。

他の利用者さんへの介助。
食事。
排泄。
記録。
見守り。
家族対応。

その途中で、外部施術者への対応もしています。

施術者には小さく見えること 現場では増える仕事
居室まで連れてきてもらう 他利用者の対応を中断する
毎回ベッドへ移乗してもらう 職員が施術開始に合わせて動く必要がある
道具や場所を準備してもらう 訪問のたびに準備作業が増える
施術中ずっと付き添ってもらう 職員一人の時間を長く拘束する

一つひとつは数分でも、訪問が継続すれば積み重なります。

「これくらいならやってもらえるだろう」を前提にしないことが大切です。

介護現場から見た訪問施術の負担については、福祉用具側の意見も含めてこちらで整理しています。

▶ 福祉用具側から見た訪問鍼灸|「利用者に必要」だけでは現場に届かない理由

必要なところは頼っていい

だからといって、何も頼ってはいけないわけではありません。

施設職員さんに確認した方が安全な場面もあります。

本人さんの普段の移乗方法。
転倒リスク。
その日の体調。
認知症や障害特性による注意点。
職員さんしか分からない拒否のサイン。

こうした情報を聞かず、施術者だけで進める方が危ないことがあります。

頼った方がよいこと 理由
普段の移乗方法を確認する 施術者独自の方法で事故を起こさないため
当日の様子を聞く 普段との違いを判断しやすくするため
苦手な声かけを確認する 本人さんの不安を強めないため
安全上必要な介助をお願いする 無理に施術者一人で対応しないため

大切なのは、「頼るか、頼らないか」ではありません。

安全や本人理解のために必要なところは頼る。

施術者側でできることまで、毎回当然のようにお願いしない。

この線引きです。

介護職さんから訪問施術者へ伝えてもらうと助かる情報については、こちらの記事で詳しく整理しています。

▶ 介護職が訪問施術者に伝えると助かる情報|痛み・移乗・トイレ動作の見方

施術後に仕事を残さない

訪問施術者が注意したいのは、施術中だけではありません。

施術後に、介護職さんの仕事を増やすことがあります。

「あとでこの運動をしてください」
「今日は多めに歩かせてください」
「この姿勢にならないよう見てください」
「家族さんにこれを伝えておいてください」

施術者側では、利用者さんのために伝えているつもりです。

ただ、その一言が施設職員さんへの追加業務になることがあります。

特に、施設全体の方針や職員配置を確認せずに頼むと、現場では対応できません。

仕事を残しやすい伝え方 共有に変える
毎日この運動をしてください 今日はこの動きなら嫌がらずにできていました
もっと歩かせてください 今日は歩き始めが比較的スムーズでした
この介助方法にしてください この動作では痛みが出にくい様子でした
家族さんに伝えてください 施術に関する説明は施術者側で行い、内容を施設にも共有する

気づいたことは伝えていい。

ただし、職員さんへ仕事として渡すのではなく、判断材料として返す。

この方が、介護職さんは必要に応じて使えます。

その日の介助や見守りに使える申し送りについては、こちらの記事で整理しています。

▶ 介護職への訪問鍼灸の申し送り|その日の介助・見守りに使える伝え方

一人で完結しすぎるのもズレる

介護職さんへ負担をかけたくないからと、何も頼らず、何も伝えずに施術を終えるのも違います。

施設側からすると、

何をしているのか分からない。
今日の本人さんの様子が分からない。
注意点があるのか分からない。
家族さんと何を話したのか分からない。

という状態になります。

訪問施術者が一人で完結しすぎると、介護職さんは関わりようがありません。

必要なのは、介護職さんを施術に巻き込むことではありません。

施術後に、必要な情報だけ返すことです。

「今日は特に変わりありません」
「移乗時だけ右膝を痛がっていました」
「少し疲れているので、今日はこのまま休んでもらっています」

このくらいでも十分なことがあります。

施術後に短いフィードバックを残す意味については、こちらの記事で整理しています。

▶ 訪問施術者は無口で帰っていいのか|高齢者施設でフィードバックが必要な理由

最初に役割を決めると迷いにくい

介護職さんとの距離感は、毎回その場で考えるより、最初にある程度決めておく方が楽です。

たとえば、

施術場所への移動は誰がするのか。
移乗介助が必要な場合はどうするのか。
施術後は誰に一言伝えるのか。
担当職員さんがいない時はどうするのか。
家族さんへの説明は誰がするのか。

ここが決まっているだけで、訪問のたびに職員さんへ頼む範囲が変わることを防げます。

最初に決めたいこと 決めておく理由
施術前の準備 毎回職員さんへ依頼しなくて済む
必要な移乗介助 安全面と役割を明確にする
施術後の共有先 誰に伝えるか迷わない
家族対応 施設への丸投げと飛び越しの両方を防ぐ

施設が訪問施術者を受け入れる前に決めておきたいことについては、こちらの記事で詳しく整理しています。

▶ 施設が訪問施術者を受け入れる前に決めたいこと|時間・場所・報告・家族対応

介護職さんとの距離感は、気遣いだけでは安定しません。

最初に役割を決めることで、お互いの負担が減ります。

まとめ

施設に入る訪問鍼灸・訪問マッサージでは、介護職さんとの距離感が大切です。

介護職さんは、施術者の助手ではありません。

だから、施術の準備や移乗、施術後の運動などを、毎回当然のようにお願いするのは避けた方がよいです。

一方で、安全面や本人理解のために、職員さんの情報や介助が必要な場面もあります。

何も頼らず、何も共有せず、一人で施術を完結することが正解でもありません。

必要なところは頼る。
自分でできることは自分でする。
施術後に仕事を残さない。
その代わり、現場が使える情報は短く返す。

このくらいの距離感が、施設では続きやすくなります。

迷うなら、「これは安全のために必要な協力か。それとも施術者側の都合でお願いしているだけか」と一度考える。

それだけでも、介護職さんへの頼りすぎは減らせます。

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