訪問鍼灸の判断|失敗を叱ると、次から本当のことを言ってもらえなくなる

①この記事で避けられること(読む理由)

この記事では、
・患者さんや利用者さんの失敗を、そのまま指導の材料にしてしまうこと
・「だから言ったのに」で終わらせて、次の情報が上がってこなくなること
・正しさを通したつもりで、実際には関係と安全性を落としてしまうこと

を避けるための判断を置いています。

②誰向けか

・訪問鍼灸をしている人
・訪問看護、介護職など、生活の場で指導をする人
・転倒、服薬、起き上がり、移動などで繰り返し注意を伝える立場の人

③現場では「言ったのに」が出やすい

支援職や施術者がよく失敗する場面があります。

たとえば、
以前から危ないと伝えていた動きや置き方を、
相手がまた繰り返してしまった時です。

その時、教える側はつい、

「だから言いましたよね」
「またそんな置き方してるんですか」
「危ない目に合うと分かりますか。今度から気をつけてください」

という方向に行きやすいです。

気持ちは分かります。
実際に危ないし、
前にも伝えているし、
今度こそ分かってほしいと思うからです。

でも、この場面で正しさを前に出しすぎると、
だいたいうまくいきません。

④起きがちなこと

患者さんや利用者さんが失敗した時、
支援者側はその失敗を見て、

「ほら、やっぱり危なかった」
「これで分かったはず」
「次からは自分の言うことを聞くだろう」

と考えがちです。

そして、
その失敗にフォーカスして指導を強めます。

でも、相手の側で起きているのは、
別のことです。

失敗したことそのもの より、
失敗を報告した時にどう扱われたか
の方が残ります。

その結果、
次からは

・失敗を教えてくれなくなる
・本当のことを隠すようになる
・「あの人は怖い」「嫌な人だ」と感じる

こういう方向に進みやすくなります。

⑤違和感(判断が必要な場面)

ここで見落としやすいのは、
支援者側は
「正しいことを言っている」
つもりだということです。

でも現場では、
正しいことを言ったかどうか より、
次も情報を渡してもらえるかどうか
の方が大事な場面があります。

たとえば転びそうになった、
危ない起き上がりをした、
夜間に無理をした。

こういう情報は、
次の事故を防ぐためには上がってきてほしい情報です。

そこで
「だから言ったのに」
が前に出ると、
相手は
「言うと怒られる」
「また責められる」
と学びます。

すると、
支援者側は正しさを通したつもりでも、
実際には安全に必要な情報が上がらなくなります。

⑥減らせる判断

失敗に対して、正しさより先に情報を受け取ること

この手の場面では、
まず感情を入れず、
その出来事を
ただの情報の1つとして扱う
方が安全です。

たとえば、
「怖かったですね」
「大丈夫でしたか。無事でよかったです」
「では、次はこう置くと安全だと思うので、一緒にやってみましょう」

このくらいで十分です。

逆に、
失敗そのものを使って
自分の指導を正当化しようとすると、
次の報告が途切れます。

支援の場では、
その一回で分からせることより、
次も本当のことを話してもらえること
の方が大事です。

⑦優しくするだけでも足りない

ただし、
ここで誤解しやすいのは、
優しく受け止めればそれで終わり、ではないことです。

「そうなんですね」
「怖かったですね」
で終わるだけでは、
次の事故は防げません。

大事なのは、
受け止めたあとに
次の安全行動に繋げること です。

たとえば、
・置き方を変える
・起き上がりの順番を変える
・環境を調整する
・家族や他職種と共有する

こういう具体の一手まで置く。

つまり、
脅しで動かさない
でも
受容だけで終わらせない

この間が必要です。

⑧認知機能や自己効力感も一緒に見る

この手の指導で忘れやすいのは、
相手が
「分かっていてもできない」
可能性です。

認知機能の低下があるかもしれない。
習慣化した動きが変えにくいのかもしれない。
何度失敗して、自己効力感が下がっているのかもしれない。

それなのに、
失敗を材料にしてさらに圧をかけると、
相手は
「できない自分をまた確認させられる」
だけになります。

支援者が見るべきなのは、
その失敗が
注意不足 なのか、
理解の問題 なのか、
環境の問題 なのか、
能力の問題 なのか、
そこです。

⑨今ならこう対応する

今なら、
こういう場面では
まず失敗そのものを責めません。

先にやるのは、
・怪我がないか
・何が起きたか
・どこで危なくなったか
・次に変えるなら何か

を整理することです。

そして、
言葉としては
「怖かったですね」
「無事でよかったです」
から入ります。

そのうえで、
「では次はこうしましょう」
と、安全行動に繋げます。

一回で分からせることより、
次も報告してもらえる関係を残す。

その方が、
結果として事故を減らしやすいです。

まとめ

この記事で残す判断は1つです。

失敗を使って指導を正当化すると、次から本当のことを言ってもらえなくなる

支援者が正しさに飲まれそうになる気持ちは分かります。
でも、そこで
「だから言ったのに」
に寄ると、
情報は止まります。

必要なのは、
失敗を責めることではなく、
失敗を情報として受け取って、
次の安全に変えることです。

支援の場では、
分からせることより、
次も話してもらえることの方が大事な場面があります。


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